大都市圏では自社で基地局を設置して楽天ブランドを全面に出し、地方や山間部などのエリアでは、引き続きドコモの回線を借りたままMVNOとして切り替えられるようにするというもの。いわば、キャリアとMVNOのいいとこどりのハイブリッド型で、これなら投資額もセーブできる。

 そこがクリアできれば、もとより楽天スーパーポイントを駆使し、楽天市場に加えて楽天銀行や楽天トラベルなどのグループ企業も巻き込んだ楽天経済圏での囲い込みが活き、料金プランも既存のキャリア3社に比べて相当、割安なものをぶつけてくるだろう。楽天モバイルで扱っているSIMフリー端末も、年に何回か実施している楽天スーパーセールでは、新型や比較的新しい端末が半値かそれに近い価格で売られていることも多い。

 一方のIIJ。これまでの回線を借り受けるMVNOという形も存続しつつ、この3月からは“フルMVNO”という業態にも打って出る。

 従来のMVNOでは持てなかった、加入者管理機能をドコモと交渉して了承を得たことで取得。これによって、IIJは独自のSIMカードが発行できるようになり、ユーザーが海外へ行った際にはIIJとの契約の下で安価にローミングできるようになる(従来はドコモのローミングサービスの「ワールドウイング」を借り受けていた)。

 また、訪日外国人もSIMカードを日本で差し替えることなく使うことができる。IIJのフルMVNOは、当初は海外旅行者や海外出張者向けとインバウンド向けながら、将来は国内の個人向けにも何かしらサービスを開始するだろう。

 ちなみに、IIJは単なるMVNOではなく、MVNE(モバイル・バーチャル・ネットワーク・イネイブラー)という側面も持つ。要は、ほかのMVNO業者にもサービスノウハウを提供し、支援する業者ということで実際、DMMモバイルやエキサイトモバイルを支援している。

 このMVNEの側面も持つのはIIJと、OCNモバイルONEというサービス名で展開する、NTTコミュニケーションズの2社しかない。さらに今後は、通信機器のみならず、クルマや家電製品にも事前組み込み型のSIMカード、別名eSIMも開発し、IoT時代への準備も進めている。

 玉石混交で体力勝負、戦国時代の様相を呈してきた格安スマホの市場から、楽天、さらにIIJの2社が、まず抜け出していくだろうことは間違いない。それは消費者にとっても安心感や信頼感につながり、ユーザー満足度からいっても、この2社が他のMVNOに差をつけていく可能性が高まりそうだ。

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