その要因はいくつか考えられる。まず第1が、ドコモやau、SBが、伸びてきたMVNOに自社の契約者が流出していくことに危機感を覚え、値下げをアピールする料金プランを相次いで投入してきたこと。
第2がUQモバイルとワイモバイルの攻勢だ。前者はau系、後者はSB系で、平たく言えば自社のセカンドブランドの別動隊で、割安な料金プランなどでIIJや楽天などのMVNO潰しに本格的に打って出たこと。
第3が、参入業者が多くなり過ぎてMVNOが過当競争に陥り、料金プラン競争なども限界に達してきたためだ。実際に昨秋、MVNOの1社で自社でSIMフリー端末も手がけていたフリーテルが経営破綻し、同社を楽天が吸収。それによって楽天は契約者数を140万人まで増やすことができた。その勢いを駆って、昨年末に一気に通信キャリアへの昇格という勝負に出ることを表明したわけだ。
格安スマホ市場自体もだんだん変わってきている。
当初は、とにかく安い端末ということがクローズアップされがちだったが、同市場で目下、シェアトップの中国のファーウェイを例にとると、下は2万円台、さらに3万円から5万円の普及価格帯に加え、最近は8万円から10万円のハイエンドゾーンまで幅広く端末の品ぞろえしてきている。
今後は格安スマホ、格安SIMといった呼び名のステージは終了し、本来のSIMフリースマホやSIMカードという呼ばれ方に変わっていくのではないか。いまはその過渡期だといえる。
ユーザー側のほうも、シニア層以上は通信キャリアの複雑でなお高い料金体系に、巧みなセールストークなどで縛られ続ける人が多い一方、ITリテラシーの高い若年層は、安価なSIMフリー市場に流れていく傾向が、今後も続くと思われる。もちろん個人差があるので、シニア層以上の人でも、自分でSIMカードを端末に挿して使えるように設定し、大抵のトラブルはネットで調べれば事足りて店舗へ出向く必要がない、という人は通信キャリアから離れていくだろう。
また、あまたの数が存在するMVNOも、今後は優勝劣敗や淘汰が進まざるを得ない。MVNOのサービスを従来通りしつつ、一方では“脱MVNO”、平たく言えば“脱格安スマホ”を志向していく傾向が強まっていく。
ただし、それを実現するには、圧倒的な知名度や資金力か、圧倒的な技術力のどちらかがなければ成しえない。そして、知名度や資金力を背景に新展開をもくろむのが楽天、技術力で新たな市場を創造しようとしているのがIIJだといえる。
楽天のキャリア進出だが、ドコモやau、SBは基地局設置などを含めて、桁違いの莫大な設備投資が要るため、それがMVNOとは真逆の高い参入障壁として、3社の寡占を許してきた1つの要因になっている。3社も、過去の儲け過ぎ批判には「莫大な設備投資がかかるので、これくらいの収益が上がらなければとてもやっていけない」という弁明で批判をかわしてきた。
となると、巨額の設備投資負担は楽天といえども屋台骨を揺るがしかねない。そこで噂されている楽天の今後のビジネスモデルはこうだ。