広い個室、私の手にはバラのどでかい花束があり、快調なトークで私を口説き落とそうとする30半ばの彼が目の前にいる。彼とは年上男性たちとのお食事会で出会った。年上男性とこうしてお話しするのは初めてのことだった。
しかし私は不思議でならなかった。
私はただの女子大生。なんでお金持ってそうなこのおじさんは、こんな私をわざわざ一生懸命口説くのかな……と。純粋な私は、ハテナをそのまま彼にぶつけた。
彼は、「そんなかわいい顔で生まれて、話も楽しいし、大切にしたくなる。まずその顔で産んでくれたことを親に感謝しなさい」と私の頭を撫でた。そしてそのままキスをしてきた。
しかし、私にはまだ疑問がいっぱいあった。
ちょっと! 待って! まだ聞きたいことがあるんです! そんなことまで言うなんて、結婚するんですか? 何を企んでるんですか? 何目当てですか? じゃあ今からうちに一緒に帰って、親に挨拶しますか!?
当時私はあまりにもピュアだった。
突拍子もない私の訴えに困った彼は無理矢理またキスをしてきたが、私は引かなかった。彼は言った。
「ここまでしたのに落ちない女の子、初めて。みんな落ちるよ? 何がダメなの? 今日はわかった。時間も時間だし親御さんには失礼だから挨拶するなら後日。またデートに誘う。面白いよ、俺はお前に惚れた」
帰路に着き、真っ赤なバラの花束が何本あるか数えながら、私はウキウキしていた。今まで同級生の男の子しか知らなかったけど、女の子に生まれて、こんな口説き方されるなんて、なんか漫画みたい! なんだか楽しい!