作家の佐藤優氏と思想史研究家の片山杜秀氏が「平成史」を語り合うシリーズ。今回は、2008年(平成20年)~2011年(平成23年)の出来事を振り返る。2人は、不満を抱く人間の憎しみの対象が個から“場”に変化したと語り合った。
佐藤:昨年11月、トランプがアメリカ大統領になってはじめて来日しました。注目すべきは、横田基地に降り立ったことです。なぜ羽田空港ではなかったのか。話は11年前に遡ります。2007年11月にキャンプ座間に置かれていた朝鮮国連軍(※注1)の後方司令部を横田基地に移した。実はいまだに朝鮮戦争時に組織された多国籍軍の後方司令部が日本に置かれているんです。
【注1/1950年6月の朝鮮戦争で創設された多国籍軍。本部はソウル。後方司令部は横田基地に置かれる。豪空軍所属の司令官ら3名が後方司令部に常駐。英、仏など8カ国の在京大使館に、連絡将校として駐在武官も駐留。】
片山:とすると北朝鮮は、トランプが国連軍を激励しにきたと考えるのでは。
佐藤:だから横田で行ったトランプ演説は北朝鮮を激しく刺激しました。
片山:北が朝鮮戦争の休戦協定を破ったら、横田が真っ先に攻撃対象になる危険性があるということですね。しかし国連軍後方司令部という肝腎の話は日本ではまったく報じられなかったのではありませんか。