佐藤:メディアを含めて、そこに気付いた人はほとんどいなかった。いえ、そもそも朝鮮国連軍が日本に駐在している事実すら知らない人が多いんです。
一方で、興味深いのは、外務省のHPで、こっそりと朝鮮国連軍の存在や移転のニュースが広報されていること。積極的にアナウンスはしないけれど、黙っていることのリスクも承知している。あとで、知っているのになぜ言わなかったんだ、との誹りを受けたくないんですよ。古巣だから、彼らの習性はよくわかります。後方司令部が横田に移転した翌年の2008年にも日米安保に一石を投じる出来事が起きています。
10月に発覚した田母神論文問題(※注2)です。航空幕僚長の田母神俊雄さんが、アパグループが主催する懸賞論文の最優秀賞に選ばれた。彼の論文は日中関係の文脈で注目を集めましたが、実は反米主義者の田母神さんが航空自衛隊のトップだったことが内外に明らかになってしまったことが、更迭の原因です。
【注2/田母神俊雄航空幕僚長が「日中戦争は侵略戦争ではない」「日米戦争はアメリカによる謀略」「日本は集団的自衛権を容認すべき」などとする論文を発表。政府見解に反するとして更迭された。】
片山:田母神さんの歴史観は自衛官としても異色でした。独学で築いた彼の歴史観を評価したアパの元谷外志雄さんとは、どんな方なんですか?
佐藤:一度だけ対談をしたことがあります。元谷さんは藤誠志(ふじせいじ)というペンネームで言論活動を行っています。すごい迫力の人ですよ。しかも安倍さんとも親しかった。かつては表には出てこなかったタイプの元谷さんや田母神さんがこの時期に権力の中枢にアクセスしはじめた。