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角居勝彦調教師が分析 「馬は賢い動物なのか?」

名調教師が「馬の賢さ」について語る

 厩舎コメントなどでよく「差す競馬を覚えた」ということがある。馬は賢い動物なのだろうか。角居勝彦氏の週刊ポストの人気連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」より、馬は賢いのか否かについてお届けする。

 * * *
 馬は人の気持ちを汲むりこうな動物です。しかしりこうの反対語の「馬鹿」には馬が入っていて、ホースマンとしてははなはだ面白くない(笑い)。

 おそらく「差す競馬を覚えた云々」というのは、人間の洒脱な語彙なのです。聞いてなるほどと思わせてしまう。馬はゴール板がどこかを認識していますが、そこできっちり差そうと計算して脚を使っているわけではない。

 差すというのは、逃げ切りではなく、道中でタメを作って終いで切れる競馬です。大事なのはタメを作ることで、つまりは我慢を覚えることです。

 換言すれば、「我慢できるようになった」。こうなると、馬が賢いといったニュアンスは薄まってくる。「我慢」よりも「覚える」と表現するのは、ホースマンが馬をりこうだと思いたいせいでしょう。

 具体的には、それまで2000メートルを使って結果が芳しくなかった馬を1600メートルで走らせる。これは「馬に我慢を覚えさせたい!」という陣営のメッセージです。

 タメを作るには、前に壁を作って後方で我慢しなければいけない。しかし芳しくなかった2000メートルで引き続きそれをやると、ほぼうまくいきません。

 そこで距離を短縮する。我慢してタメを作り、馬群を抜いていく作業を繰り返すわけです。「タメ→切れ」の徹底。それが奏功すれば、「差す競馬を覚えた」となるわけですね。

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