「何しろ社歴はまだ3年。取締役の中でも最年少。これで求心力を持てるはずがない。トップとして日本電産を率いていくには永守氏の後ろ盾が不可欠だ。永守氏の力をうまく利用しながら、いかに日本電産を成長させていくかが、吉本氏には問われている」(市場関係者)
永守氏は7:3の役割分担について「6割、5割と減らして分担を逆転させる。私と同じ経営ができる人材に育成するのが最大の仕事だ」と語っている。時間をかけての禅譲と見ることもできるが、「裏を返せば真の意味での“後継者試験”がこれから始まるという意味でもある」(前出・全国紙記者)。
カリスマ創業者の社長交代の難しさは他企業を見ても明らかだ。ソフトバンクの孫氏は後継者に据えたニケシュ・アローラ氏とあっさり決別。ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正氏も玉塚元一氏にいったん社長の座を譲りながら返り咲いた。
当の日本電産も過去にはカルソニックカンセイ元社長の呉文精氏を後継者の有力候補としてスカウト。永守氏を補佐する副社長に就いていたが、入社からわずか2年で日本電産を去っている。
かつて永守氏は経済誌のインタビューでトップに求められる資質を問われ、〈自分の考えを訴える力〉〈白黒を決める決断力〉〈失敗しても絶対逃げないこと〉の3点を挙げている。そして後継者に求める条件は、〈会社の中でいちばん実績を上げられる人〉とも。
果たして吉本新社長はカリスマ創業者のハイレベルな要求すべてをクリアして、見事に“永守イズム”を引き継ぐことができるか。