「最近はアッパーと呼ばれる靴の表面部分は革でも、ソール(靴底)にゴムを使い、その中間部分にスニーカーのようなクッション性や消臭機能、履き心地を追求した商品が数多く販売されています。例えば、アシックス商事が開発した『texy luxe(テクシーリュクス)』も見た目は完全にビジネスシューズですからね。
落ち着いた色で、かつビジネスシューズと遜色ないデザインのこうした靴をスニーカーの範疇に入れるならば、すでに普及は進んでいるともいえます。
いまや歩きにくい革底よりもゴム底のビジネスシューズを選ぶ人は圧倒的に多いですし、今後もいかにファッション性と機能性を兼ね備えたビジネスシューズを開発するか、メーカーはそこに大きなビジネスチャンスを見出そうとしています」(前出・南氏)
本格的な運動に適した靴だけがスニーカーではない。ビジネスシューズのさらなる進化の度合いが、スニーカービズ定着の行方を左右するといっても過言ではないだろう。
だが、そもそもスニーカービズの効果に懐疑的な見方もある。
「結局、歩きやすいスニーカーで通勤をといっても、往復の通勤時間や1日の仕事量・運動量が変わるわけではありません。何よりも長時間労働の是正や有給休暇の取得促進など、サラリーマンの働き方自体が変わらなければ、いくら服装を変えても健康増進にはつながらないでしょう」(社会保険労務士)
「働き方改革」のしわ寄せがこんなところにも……。いずれにせよ、国の呼びかけだけではスニーカービズの浸透は難しそうだ。