医療的ケア児の娘を殺害した母親の判決は執行猶予付きに(画像はイメージ、Getty)
福岡市の自宅にて今年1月、医療的ケアが必要な長女・心菜さん(当時7歳)の人工呼吸器を外し殺害したとして起訴された母親・福崎純子被告(45)。福岡地裁で今月18日に懲役3年、保護観察付き執行猶予5年の判決がくだされた。
7月14日の公判で行われた被告人質問で、被告人は我が子の命を奪ってしまった苦しい胸のうちを明かしていた。ライターの普通氏がレポートする。【全3回の第3回。第1回から読む】
「ほっぺをぎゅーっとしたい」
夫との口論をきっかけに、心菜さんと無理心中を図ろうとした被告人。弁護人からは、被告人の心情を慮ってか、犯行当時についての質問はなかった。
事件を経て被告人の意識が回復したのは、病院のベッドの上だった。
「絶望でした。心菜だけ先に逝ってしまった。早く自分も逝かなきゃ」
当時の思いをこのように語り、目の前の携帯電話で薬の致死量を調べ、家で首吊り自殺をしようと考えた。
しかし逮捕されたため、家に帰ることも、心菜さんの通夜に参列するもできず、4か月の勾留を受けた。その間は、自分に食事を取る資格はないと何も口にせず、夫と離婚して、実家や友人とも縁を切って、1人で心菜さんの遺骨とひっそり生きていく思いであったという。しかし、夫、弁護士、友人、そして心菜さんが世話になった関係者の励ましを通じて、徐々に思いは変化していく。
事件後、心菜さんも通っていた放課後デイサービスの手伝いを頼まれた被告人だが、最初は誘いを断っていた。それでも説得され手伝いを始めると、病気と闘いながら頑張る子どもを愛おしく感じ、なんでもしてあげたい気持ちになった。楽しく、充実した時間であったという。
今後は、ケアストレスカウンセラーの資格取得を目指している。その理由を以下のように答える。
「私のように何も言えない悩みを抱える人の吐き出す場所を作りたい。悩み、愚痴を聞いて、私のようにならないようにしたい」
弁護人からの質問の最後に、事件についての思いを話した。
「なんでこんなことをしたのか、自分でも信じられない。時間を取り戻したい。心菜に会いたいです。お風呂に入れたり、オムツを替えたいです。きれいな足をストレッチしたり、ほっぺをぎゅーっとしたいです。とにかくあの生活に戻りたいです」