超音波内視鏡は、胃カメラの先端部に小型の超音波(エコー)装置が付いたもので、胃から十二指腸まで挿入し、膵臓の状態を調べる。疑わしい影があれば、確定診断のために細胞を採取することができる。検査時間は15分ほどで、患者の負担は通常の内視鏡検査(胃カメラ)とほとんど変わらない。
菊山医師は、全国の膵臓がん専門家と研究会を作り、超音波内視鏡検査による膵臓がんの早期発見の取り組みを進めている。同研究会に参加する医師が所属し超音波内視鏡検査を実施している施設は現在、全国に15ある。
◆世界初のプロジェクト
2007年、人口14万人の広島県尾道市で、世界初の膵臓がん早期診断プロジェクトが始動した。仕掛け人は、菊山医師の研究仲間でもある、花田敬士医師(JA尾道総合病院・広島大学臨床教授)。
「地元医師会と連携して、膵臓がんのリスクが高い患者(膵炎、糖尿病、家族に膵臓がん患者がいる、大量飲酒、喫煙)にJA尾道総合病院で超音波内視鏡検査を受診するように勧めてもらいました」
結果、10年間で1万2307人を検査して、のべ555人の膵臓がんを発見した。このうち1期40人、0期24人に手術を実施。同病院の膵臓がん5年生存率は7%から20%と約3倍に大きく向上した。この取り組みは世界的にも注目され、大阪市北区、熊本市、鹿児島市などで同様のプロジェクトが進められている。