安倍首相は前述の施政方針演説の中で「同一労働同一賃金」を実現する、「非正規」という言葉をこの国から一掃する、「長時間労働」の慣行を打ち破る、「ワーク・ライフ・バランス」を確保する、などと言っている。だが、それらはそもそも民間企業が何を目的にするものかわかっていない国会議員の稚拙な議論であり、真の働き方改革とは、ほとんど関係がないのである。
さらに、安倍政権は働き方改革の一環として、これまで原則禁止だった会社員の「副業・兼業」を原則容認に切り替える方向で制度改正を進めている。多様な働き方を認めることで人手不足を補うとともに、能力開発・人材開発につなげて経済の活性化を促すのが狙いだという。
しかし、これまで副業・兼業が禁止されていても、やる人はすでにやっている。また、この“官製ムーブメント”に乗って普通のサラリーマンがいきなり副業・兼業を始めてみても、コンビニや飲食店の店員、ビルの守衛や清掃員、高速道路の料金徴収員など「時給いくら」のアルバイトしかできないだろう。
※SAPIO2018年3・4月号