◆公益法人化したにもかかわらず…
春日野巡業部長への処分について協会に聞くと、「市長が倒れた時、『トイレに行っていた』という説明に間違いはない。(『奥から搬送を見守っていた』というのは)その後の行動について補足説明。発言を“修正した”という事実はない」(広報部)との回答だった。
ネット上の当日の動画を見ると、「女性は土俵から下りてください」のアナウンスの数秒後に、春日野親方の姿が映り込んでいるが、それでも「全く把握していなかった」などの発言に修正はないという。
『大相撲の経済学』の著書があり、2011年に日本相撲協会の公益財団法人化に向けた改革案を答申した「ガバナンスの整備に関する独立委員会」で副座長を務めた慶応大学の中島隆信教授はこう言う。
「公益法人化にあたって、協会内のどの立場の人間が、どういう責任を負うかを明確にすべきと提案しましたが、結局、曖昧なままで今に至るまでやってきてしまった。今回も、巡業で緊急事態が起きた時に、誰が責任を持つのかが事前に決まっていなかったということでしょう。
現在の巡業は『売り興行』で、協会は勧進元に興行権を売るかたちです。不測の事態が起きた時に責任を負うのは協会なのか、興行主なのかが曖昧だったから、その場にいた看護師さんが動かざるを得なくなった。組織として役割分担を明確にしていれば、春日野巡業部長も、あんな見苦しいことにならなかったでしょう」
※週刊ポスト2018年4月27日号