テレビ朝日記者のように、セクハラ被害を受けるきっかけそのものを、テレビ局や新聞社側が作り上げている、という指摘については、若手官僚も次のように証言する。

「どこのテレビ局記者が美人だとか、そういう話は酒の話で必ず出ます。ブスや年配、ムサい男の記者が担当になったりすると”あんな奴に喋るか”と言ってみたり、気に食わない男の記者であれば、飲み会で裸踊りをさせてみたりとイジる。こちらの要求にこたえないとネタは出さないぞ、という関係を互いに熟知しているわけですから、セクハラもあればパワハラだって当たり前。いやなら来なきゃいいし、ネタが欲しいならこっちの要求を聞け、ということでしょうね。女性記者さんの中には、露出の多い服を着たり、香水を振りまいて省庁幹部にベタベタ触りまくるような人たちもいます。記者を人気キャバクラ嬢か何かと勘違いしているような向きもある。

 そうした”取材”が横行していることは、我々も、放送局や新聞社の幹部だって当然知っている。幹部たちも若いころそうやってきたし、その幹部が若手を連れてあいさつに来て”引き継ぐ”わけですから。普通に考えれば異常だし、世間の常識、今盛り上がっているようなセクハラやパワハラを取り巻く世論とはかけ離れている。でも、我々も記者も、ここは世間じゃない、普通じゃない、と切り離して考えている」(某省庁の若手官僚)

 そして、もう一方の問題とされているものは、財務次官のセクハラ発言が、次官に無断で録音されたものであり、一報道機関に所属する記者が、社の規定を無視した形で第三者に素材を提供し、公開されたという一連の経緯である。通常のセクハラ問題であれば、相手に断らずに会話を録音することに問題はない。逆に、証拠として記録することを弁護士は推奨するくらいだ。ところが、近年は取材手法として、対象者に無断で録音しないよう指導される。セクハラ被害はあったと認めつつ、無断の録音とそれを週刊新潮へ渡したことを「本人も反省している」と説明するテレビ朝日の会見は、同じ行動への評価が定まっておらず、何を守りたいのかがわからない、もやもやしたものだった。

「テレビ局、新聞社は週刊新潮の記事を受けて、女性記者に一斉に聞き取りを行っています。うちの記者がやったことは社の取材ルールには違反していますが、大義ある行動ではあった。だから会見までしたわけですが、他の社から同様の被害を受けた、という女性記者は名乗り出ない。名乗り出てしまうと、お前の社の取材は受けない、隠し撮りをするだろう、と警戒されるからです」(テレ朝関係者)

 取材記者と取材される者は、気を抜くと、一方的に相手にコントロールされる関係性に陥ることがある。相手が持つ情報を少しでも先回りしてもらいたい、情報を独占したい機会が多い場合、いいように操縦されてしまう危険は常につきまとう。取材される側が自分の優位性を自覚し悪用するなら、記者を踊らせるのは簡単だ。特ダネがあるぞと言外に匂わせれば、池のコイがエサに食いつくように、面白いほど飛びついてくるからだ。

 相手の覚えをめでたくするために、朝回りや夜回り、休日に酒を飲んだりしてまで取材することが「是」なのか、といった議論まで聞こえてくる。だが、これもいつか来るかもしれないスクープ報道のための地道な準備なのだ。血のにじむような努力をしてでも独自のネタを取り、記事を書いて報じなければ、マスコミは時の権力の広報機関になりかねない。当局が発表するチラシ(※広報文)を読み上げているだけならば、権力の肥大化を許す支援機関に成り下がってしまう。報道機関なのだという自負のもとに、少なくない理不尽なことにも耐えている。

「今回の騒動は様々な問題をはらんでいます。テレ朝が世間からバッシングされていることも、擁護されていることも知っていますが、何が正解なのか、正しいのかは誰にもわかりません。ただ、一つ言えることは、セクハラパワハラを許さないと表で言っておきながら、現場ではセクハラパワハラが横行していることについて、見て見ぬふりをしてきた私たちが襟を正すべき、ということ。局幹部や他社の記者仲間も”テレ朝の女性記者は守られるべき”と表では言っておきながら、取材ができなくなるのは困る、というのが本音。結局何も変わらないか、セクハラやパワハラがより見えにくくなるのではないか、そう感じています」(テレ朝関係者)

 昨年、アメリカでハリウッドの大物プロデューサーによるセクハラとパワハラ問題が大きく報じられて以来、セクハラ被害の告白と賛同を告げる「#metoo」運動がインターネットを中心に、世界的なムーブメントとなっている。という内容のニュースや特集を、日本の大手マスコミも繰り返し報じてきた。ところが、その報道している当事者の足もとで、セクハラとパワハラが横行し、問題あると自覚しながら見過ごしてきたことが明るみに出た。

 セクハラやパワハラが問題視されることはままあっても、結局本気で考えられる機会は少なく、まさか国家運営を揺るがすような大問題に発展するとは、誰も思っていなかったに違いない。親が幼子にやさしく諭すように「セクハラやパワハラはダメ」と、皆が自身に言い聞かせなければならぬほど、私たちのモラルは低い基準にあることを、今一度自覚しなければならない。

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