政府は今国会で「働き方改革関連法案」の成立を目指しているが、なかでも注目を集めるのが「医師の働き方改革」である。医師の時間外労働は原則、月45時間に制限される予定だ。現行では労使協定(三六協定)を結べば、時間外労働は無制限だったが、これも月平均60時間(単月で100時間未満)までに制限されることになる。
医師の残業を減らすための方策として挙げられているのが「複数主治医制」だ。複数の医師でチーム医療体制を敷いて患者を診る方式で、シフトの時間を短くするなどして休みを取りやすくする。これを導入した病院では“主治医がコロコロ替わる”状態になる。
労働時間を減らす分、医師の数を増やせばこうした問題は起きないが、都心部は別にして、地方では医師不足が慢性化している実態がある。医師の数を増やさずに、長時間労働を是正しようとすれば、診る患者の数を減らすしかないのが現実である。
患者を減らすため、救急患者の受け入れを選別するだけでなく、土日や夜間の外来診療を減らす病院は多い。一部の医療行為を看護師に任せたり、医師の事務作業を補助スタッフが代行することも今後はあり得ると考えられる。
こうした事態に患者としてはどう対処すべきか。医療ジャーナリストの油井香代子氏はこう話す。
「一人の主治医にこだわらなければ逆に予約は取りやすくなり、受診を断念することがなくなります。それには、病気と向き合う際に主治医任せにせず、どんな医師に対してもきちんと自身の症状や希望する治療方針などを伝えられるようにすることです」