「私の内閣で『必ず』解決する決意で拉致問題に取り組む。オールジャパンで結果を出していく」
政権に返り咲いた5年前、安倍氏は拉致被害者家族会にそう約束すると、国会答弁などでも「目的は(横田)めぐみさんはじめ拉致被害者『全員』を取り戻すことだ」(2014年3月19日、参院予算委員会)といった発言を繰り返した。
主張は正しい。他国に拉致された国民を全員帰国させるのは政府の責任だ。「だが」と拉致議連幹部がいう。
「総理のいう『必ず』解決のゴールはどこで、『全員』とは何人のことなのか。政府認定の拉致被害者はすでに帰国した5人を含めて17人。その他に、北に拉致された可能性が排除できない特定失踪者が約880人いる。あの言葉で、総理は拉致被害者を何人帰国させたとしても、全面解決とはいえなくなった」
金正恩にもそこを突かれた。日本側の要求が高いとわかると、北は首脳会談の相手から日本を外した。蚊帳の外に置かれた首相はトランプ大統領に「拉致解決」の口添えを頼み、拉致被害者家族を訪米させて国連本部で北朝鮮人権問題のシンポジウムを開くなど、国際社会に「北の非道」を訴える圧力外交を展開する。
それに対して、金正恩はこれ見よがしに「米国人の拉致被害者3人」を返してトランプ大統領を喜ばせた上で、日本人拉致については「解決済み」(朝鮮中央通信)とけんもほろろ。日米の拉致問題を分断され、手玉に取られたのだ。
北朝鮮の核・ミサイル問題でも、首相はこの4月、国会で重大な断定発言をしている。