(4)郊外のバス便を買う
同じ理由から、郊外のバス便は論外となる。今でもバス便の中古マンションを探している人は稀。よほど売出し価格を安く設定しないと買い手が見つからないのが郊外のバス便物件。10年後は買い手すら現れない可能性が大と考えるべきだ。
(5)湾岸埋立地のタワーマンションを買う
今はタワーマンションブームと言っていい状況。ただ、ここ数年はタワーマンションの住民間で起こっている階層的な軋轢をテーマにしたテレビドラマや小説が注目された。タワーマンションを否定的に捉える見方も広がっている。
ヨーロッパにはほとんど超高層な住宅はない。イギリスに一部あるが、上流の人々には嫌われている。日本でも、昔から「○○と煙は高いところに昇りたがる」という価値観が主流だった。何代にもわたって富裕層である人々で、タワーマンションを好む方は少ない。どちらかというと「下品」だと見做される。日本でも、社会が成熟すればヨーロッパ的な大人の価値観が戻ってくるはずだ。
また、タワーマンションには超高層なるが故の欠点がいろいろある。
・外壁修繕に莫大な費用と通常の倍以上の時間がかかる
・最終的に取り壊せない恐れがある
・戸境壁が乾式なので隣戸との音漏れがある
・いざという時に救急隊員の到着が遅れて生存率が低くなる
この他にもいろいろあるが、ここではこのくらいにしておこう。タワーマンションの中でも、湾岸の埋立地にあるものはさらにリスキーだ。東京はまだ、タワーマンションが建ち始めてから震度7以上の地震を経験していない。実際にそれがやって来た時に、埋立地のタワーマンションがどうなるのか、確かなことは誰にも分からないのだ。
(6)竣工引渡しが1年半以上先の物件を買う
日本の住宅は長らく「売り手市場」、「貸し手市場」が続いてきた。その結果、様々に奇妙な商習慣が生まれ、定着してしまった。
例えば、賃貸契約における「礼金」や「更新料」。これらには何の法的根拠もない。そのような判例もある。しかし今でも続いている。
新築住宅の「青田売り」というのも、考えてみれば売り手のみに有利な取引である。その住宅が竣工する前に手付金を取って売買契約を結んでしまうのだから。買い手が解約しようとすると、手付金を放棄しなければならない。買い手はまだ売買の対象となる住宅を確認することなく何千万円、あるいは1億円以上の住宅の購入契約を締結してしまうのだ。
仮に、その購入に住宅ローンを使う場合、適用金利は実行時のものになる。引渡しが2020年の5月なら、2年先の金利でローンを借りなければならない。2年先のローン金利について、確かなことが分かっている人がいるのか?
アメリカはすでに金融引締めに入って金利は上がっている。日米の長期金利の差は3%に迫っていることはあまり注目されていない。現状、日本の長期金利は日銀が0%に誘導している。これは日本の金融史上かつてない異様な状態。2年先もこれが続いているとは、誰も言えないはず。
この先、金利が上がることはあっても下がることはない。今ほど「青田買い」が危険な時期はない。先が読めるのはせいぜい1年未満。1年半以上引渡しが先の物件は避けるべきだ。現金の用意がある場合は別だが。