それにしても、なぜ一時は国民の支持を得て政権交代を果たした旧民主党勢力が、これほど情けない状況になっているのか? 答えを先に言えば、自民党との「対立軸」が全く打ち出せていないからだと思う。
もともと旧民主党は、各都道府県の都道府県庁がある「1区」で支持を集める都市型政党だった。つまり、農民、漁民、医者、建設業者など少数利益集団の利権を重視する自民党型の政治に対し、マジョリティである都市生活者の意見を代弁することが原点だった。ところが、この対立軸を旧民主党の人たちは忘れてしまったようだ。
さらに根本的な問題は、最大の支持母体である労働組合=連合の存在だ。今や連合は資本家に搾取されている貧しい労働者の集団ではなく、日本の中では非常に恵まれている大組織の金持ち集団だが、集票マシンとしての連合に頼る限り、本当に国民のためになる政策や自民党に対抗できる政策は出せない。たとえば、役人の数を削減すると言えば自治労が反対するし、AI時代は教師は半分でよいと言えば日教組とぶつかる。そういう中途半端な政党になった結果、対立軸が消滅してしまったのである。
また、先の総選挙直前に都市型政党の代表として小池知事が希望の党を設立し、その人気目当てで民進党が合流を決めた時には、安保法制や憲法改正の容認という都市型政党とは何の関係もなく、自民党との違いもわからない政策の“踏み絵”を踏まされた。しかし、これは旧民主党の原点とは、かけ離れた方向である。
しかも、希望の党は小池知事の「排除」発言、東京五輪会場問題や築地市場移転問題をめぐる失策といった“オウンゴール”が相次いで総選挙で惨敗。小池知事と希望の党には希望が持てないという状況になって民進党は混迷を深めたが、結局、再結集して支持率0.6%の国民民主党になったわけだ。要は、自民党との正しい対立軸を示せないから、国民の支持を得ることができないのである。