「リンさんのご家族に言いたいことがあります! 私が犯人だと思われているなか、私が行った募金活動を受け取っていただいて、ありがとうございます。また事件後忙しく、墓前にお参りに行くことができず、すいませんでした。見守り活動をしていたのに、リンさんのこと、守ることができず、すいませんでした! 以上です!」
◆めんどくさい事件が起きたのかな
弁護人質問に続き、検察側の質問が行われた。事件前、澁谷被告は保護者会会長として毎朝通学路に立ち、子供たちの見守り活動をしていた。リンちゃんがいなくなった当日、澁谷被告は一緒に見守り活動を行っているA氏から「リンちゃんがいなくなった。何か知っているか」との連絡を受けている。検察官に「その時どう思ったか」と問われると、澁谷被告は淡々と答えた。
「大変なことになったなぁと。なんでこっちに連絡してくるんだろうと思いました」
澁谷被告いわく、当日は朝は自分の子供たちを軽自動車で小学校に送り、午後からは釣りの下見に行っており、その日に限って見守り活動には参加していない。
「保護者会の会長だからといっても知らないこともあります。校長に聞けばいいのに、なんで私に聞いてくるんだろうと思いました」
検察官に、なぜリンちゃんを捜そうと思わなかったのかと問われると、
「思わなかったというより、思えませんでした。いなくなった理由がわからないのと、いついなくなったのかもわからなかったですし。“めんどくさい事件”が起きたのかな、くらいにしか思わなかった」
業を煮やした被害者の代理人弁護士が次のように質した。
「あなた、自分の娘がいなくなって保護者会の会長が動いてくれなかったらどう思いますか?」
しかし、澁谷被告は「通学路で起こったことは親の責任。自分で捜してほしい」と、一言発するのみ。こうした言動に裁判官らも黙ってはいない。以下、双方のやりとりを再現する。
裁判官「午前中の陳述の最後に『見守り活動をしていたのに被害者を守れなくてすみません』と言っていたが、『登校中の出来事は親の責任』というのは矛盾ではないか」
澁谷被告「私が車でなく、歩いて自分の子供たちを小学校に送っていれば、見守りできた。車を使ったからできなかった。そのことを反省しています」
裁判官「それならばなぜ被害者に謝ったのか。学校の外で起こったことは親の責任と言っていたではないか」
澁谷被告「見えるところまで連れてきてもらえれば見守りできます。でも連れてきてもらえないとできません。見守り活動は正確にいうと『緑のおばさん』。交通整理、補助するだけ。警察の巡回ではない」