「活断層は、長ければ長いほど大きな地震を引き起こします。群馬県高崎市から埼玉県熊谷市にかけて続く『深谷断層』と、埼玉県鴻巣市から川口市に続く『綾瀬川断層』は、私の調査に基づいて考えると、一つにつながっている可能性が高い。
また、現地調査は未了ですが、綾瀬川断層は現在考えられているよりもっと南まで延びていて、埼玉県草加市の南西を通り、千葉県市川市の江戸川河口が南端となっている可能性があります」(前出・渡辺氏)
地図では、これまでに確認されている活断層を実線で示し、渡辺氏の研究の結果、存在すると考えられる“隠れ断層”を点線で示している。実際につながっているのであれば、巨大な活断層が首都圏を横切っていて、その上を東京から高崎に至るJR各線の線路が走っていることになる。渡辺氏が続ける。
「私はこの120kmに及ぶ断層を『想定綾瀬川断層』と呼んでいますが、これが動けば、M8クラスの首都圏直下型地震が発生することになります。死者・行方不明者が10万人を超えた関東大震災に匹敵する規模です」
平成24~25年度にかけて埼玉県が行なった被害想定の調査研究では、「綾瀬川断層」が動いてM6.9の地震が起きた場合、最大で全壊建物被害は5万5000棟、死者は3600人と見積もっている。これだけでも甚大な被害想定といえるが、“隠れ断層”が存在するのであれば、この数字すら過小評価であるかもしれないのだ。
地図上に実線で示した、すでに存在が確認されている首都圏の活断層だけを見ても、東京・立川や八王子、静岡・御殿場などのすぐ側を走っている上に、主要な鉄道・道路網とも重なっているということがよく分かる。
※週刊ポスト2018年7月6日号