大前研一氏
マカオやシンガポールのカジノでVIPルームを視察した私の推計では、その10分の1の7000億円も難しいのではないかと思う。なぜなら、マカオやシンガポールほど中国人富裕層がやって来るとは思えないからだ。
日本にはカジノ誘致よりも重要な課題がある。3000万人を超えて4000万人へと向かう訪日外国人客に、東京や大阪などの大都市と有名観光地だけでなく、フランスやスペインやイタリアのように、全国津々浦々にまんべんなく来てもらう方法を考えることだ。
そのためには不足している宿泊施設を整備・拡充すると同時に、全国各地でその地域ならではの自然や文化、美味しい食べ物が手軽に楽しめる仕組みを構築して世界にSNSなどで情報発信しなければならない。それこそが2周遅れのカジノを含むIRより、よほど有力な成長戦略になるのである。
※SAPIO2018年7・8月号