奈良岡:そうした工場モデルの限界が来て、国家やお金、仕事や人間関係の枠組みが再び流動的になる中、100年前の日本人の生き方に学ぶべきものがあるということですよね。
出口:その通りです。それと、成功した実業家は皆、かわいいところがあるんです。“真珠王”御木本幸吉(ミキモト創業者)は90歳を超えながら戦後、進駐軍に対して得意の足芸を披露して歓心を買うんです。もちろんそれは計算ずくですが、それにしても愛嬌があってかわいい。やはり財を成す人は、いくつになってもかわいげや愛嬌があるものなんだと思います。これも見習うべきではないでしょうか。
●でぐち・はるあき/1948年生まれ。ライフネット生命創業者。立命館アジア太平洋大学学長。近著に『戦前の大金持ち』など。
●ならおか・そうち/1975年生まれ。京都大学大学院法学研究科教授。『対華二十一ヵ条要求とは何だったのか』でサントリー学芸賞受賞。
※週刊ポスト2018年7月20・27日号