国際情報

中国の路線バス 熾烈な顧客獲得競争の末路

負けられない戦い、が思わぬ結末に(写真:アフロ)

 ビジネスをめぐる戦いが熾烈なものになることは珍しいことではない。だが、あくまで踏み越えてはならない一線はある。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。

 * * *
 今年6月、一組の夫婦に対し刑事罰が言い渡された。河北省武邑県の裁判所における一審判決である。メディアは一斉にこのニュースを報じた。その一つである『検察日報』(北京)がつけた見出しはこうだ。

〈長距離バスの運転手夫婦が、ライバル企業から客を奪うため、バスに爆薬を仕掛ける〉

 香港で量産されるカンフー映画では、ライバルの商家が互いにお抱えのチンピラを差し向けて、相手の店をメチャクチャに破壊するシーンかお約束のように登場するのだが、まさにそんな話の小型版だ。ただ、小型版といっても爆弾を造ってしまってはシャレにならない。

 犯人である夫婦は、河北省の労働者で、二人で一生懸命に働き、ついに大型バスを一台手に入れると、念願だった会社を立ち上げたのだった。2016年のことである。北京と河北省を結ぶ路線は、需要もあり、二人会社はとても順調なスタートを切った。

 だが、間もなくライバル社が同じ路線で運行を始めると、雲行きが変わった。夫婦とライバル社は、熾烈な競争をおこなうだけでなく、時には客を取り合って殴り合う事件まで起こすようになってゆくのだ。

 そうしたなか、夫婦は、ライバル会社に打撃になるよう、安全検査にひっかかるようなものを積み込み、検査官に密告するという方法を思いついた。それが今回の事件につながったのである。

 二人は花火を大量に買い、それを解体してペットボトルに詰め、それをリンゴの入った籠の中に入れると、客の目に留まりにくい席の下に放置し、安全検査官に密告したのだった。爆破するつもりはなかったとはいえ、大量の火薬を放置したのだから、とんでもない事件になっていても不思議ではない。

 夫婦はそれぞれ3年と6カ月、3年と4カ月の刑を言い渡された。

関連キーワード

トピックス

打撃が絶好調すぎる大谷翔平(時事通信フォト)
大谷翔平“打撃が絶好調すぎ”で浮上する「二刀流どうするか問題」 投手復活による打撃への影響に懸念“二刀流&ホームラン王”達成には7月半ばまでの活躍が重要
週刊ポスト
懸命のリハビリを続けていた長嶋茂雄さん(撮影/太田真三)
長嶋茂雄さんが病に倒れるたびに関係が変わった「長嶋家」の長き闘い 喪主を務めた次女・三奈さんは献身的な看護を続けてきた
週刊ポスト
6月9日、ご成婚記念日を迎えた天皇陛下と雅子さま(JMPA)
【6月9日はご成婚記念日】天皇陛下と雅子さま「32年の変わらぬ愛」公務でもプライベートでも“隣同士”、おふたりの軌跡を振り返る
女性セブン
(インスタグラムより)
「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画…直後に入院した海外の20代女性インフルエンサー、莫大な収入と引き換えに不調を抱えながらも新たなチャレンジに意欲
NEWSポストセブン
中国・エリート医師の乱倫行為は世界中のメディアが驚愕した(HPより、右の写真は現在削除済み)
《“度を超えた不倫”で中国共産党除名》同棲、妊娠、中絶…超エリート医師の妻が暴露した乱倫行為「感情がコントロールできず、麻酔をかけた患者を40分放置」
NEWSポストセブン
第75代横綱・大の里(写真/共同通信社)
大の里の強さをレジェンド名横綱たちと比較 恵まれた体格に加えて「北の湖の前進力+貴乃花の下半身」…前例にない“最強横綱”への道
週刊ポスト
地上波ドラマに本格復帰する女優・のん(時事通信フォト)
《『あまちゃん』から12年》TBS、NHK連続出演で“女優・のん”がついに地上波ドラマ本格復帰へ さらに高まる待望論と唯一の懸念 
NEWSポストセブン
『マモ』の愛称で知られる声優・宮野真守。「劇団ひまわり」が6月8日、退団を伝えた(本人SNSより)
《誕生日に発表》俳優・宮野真守が30年以上在籍の「劇団ひまわり」を退団、運営が契約満了伝える
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト
インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン