◆セクハラ、パワハラの温床に
このような職場のなかでは、どうしても公私混同が起きやすい。上司は部下に対して仕事に必要な以上の要求をしがちになるし、部下は不当な要求をされても拒否しにくい。そして、ハラスメントの被害を受けても告発することは難しい。へたをすると「おきて破り」「裏切り者」として共同体から排除されかねないし、たとえ法的に地位が守られたとしても、人間関係で動く組織の中で働き続けるには相当の覚悟がいる。
組織ぐるみの不祥事を起こした大企業や役所では、内部通報制度がありながら活用されなかったケースが多いが、それは共同体型組織のなかで声を上げることがいかに困難かを物語っている。
オフィスの環境にも問題がある。大部屋で仕切りがない日本のオフィスでは、プライバシーが保てない。そのため、どうしても人間関係が濃密になりすぎる。
このように、共同体型の組織に特有な制度や慣行がハラスメントの温床となっていることは明らかだ。さらにやっかいなのは、悪気のない、いわば善意から出た言動であっても、しばしばハラスメントになりうるということである。
かつては、管理職は部下を食事や飲みに連れて行くのが当たり前であり、管理職手当にはその費用が含まれているといわれたものだ。また上司は部下の家庭環境や経歴、健康状態などを把握し、一人ひとりの事情を配慮して管理することが望ましいといわれた。
しかし、今では逆にハラスメント扱いされたり、プライバシーへの不当な介入と見なされたりしかねない。
こうしてみると、長年にわたって維持されてきた共同体型の組織もいよいよ「賞味期限」が切れたといえるのではなかろうか。