タイワニーズを語る時、とくに、家族の歴史を大事にする。どこの出身か。祖父母や両親は何をしていたか。というのは、彼らのアイデンティティは複雑だから。中国共産党に共感しているか。あるいは国民党支持か。戦後、台湾にやってきた外省人か、それとも、戦前から台湾にいる本省人か。あるいは、マイノリティの客家か。戦時中、日本に対してどういう立場をとったか。
ひとくちにタイワニーズといっても、家族ごとに複雑な歴史があり、本書は、ファミリー・ストーリーであると同時に、家族を通してみた台湾現代史になっている。
自分はどこの国に所属するのか。アイデンティティの揺れが若い東山彰良や温又柔の文学を支えている。現在、次第に語られなくなっている作家、陳瞬臣と邸永漢に光を当てているのも、台湾現代史を見ていくうえで豊かな手がかりになる。現代の台湾を語るに当っての必読の書。
※SAPIO2018年7・8月号