労働基準監督署の「同じ病名や症状」での労災は認めないとの説明は、現在のテニス肘は2年前のテニス肘の継続で、労災事故としては同じ事故である、という趣旨だと思います。
しかし、そう考えても治癒後の症状のぶり返しが前の労災による傷病との間に医学上の相当因果関係があり、治癒時の症状に比して現在の症状が悪化し、現在の症状が治療可能であれば、再発として労災認定の対象になります。しかも、奥さんの場合には、2年前と同様の負担のある業務に従事したことにより発症したのですから、労災給付を拒否することはできないでしょう。
ただ、前のテニス肘の治療時に、医者からテニス肘の原因となった作業に従事すると再発します、と警告され、就業をしないよう指導されたのに、無視して新しい職場で同じ仕事をした場合、前のテニス肘の延長線上の負傷であるとし、現在の職場の業務との業務起因性が否定されるかもしれません。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2018年8月3日