ライフ

注目が高まる俳句、ピース又吉直樹が「怖い」と言った理由

俳人の堀本裕樹さん(撮影/浅野剛)

 人気テレビ番組『プレバト!!』(TBS系)などの影響もあって、近年、俳句がグッと身近になっている。芸能人たちが詠む句、あるいは彼らの句に俳人・夏井いつきさんが手を入れる鮮やかさを毎週楽しみにしている人も多いだろう。とはいえ、実際俳句を作るとなると話は別、という人がほとんどでは? 5・7・5の定型、そして聞きなれない季語…決してハードルは低くないように思えるが、この豊穣なる17音の世界に飛び込んでみませんか。

「これだけ日本人として生きてきて、まだ知らない日本語があるという驚きと感動。そこに俳句の魅力があります」

 そう笑顔を見せるのは、俳人の堀本裕樹さん(43才)。

「たとえば、春の季語なら“風光る”とかね。美しい言葉じゃないですか。でも、俳句をしていないと、その言葉が季語だとわからない。俳句の中でしか使われないような、独特の言い回しもあります。いくつになっても未知の言葉と出会う喜びが総合的に俳句には詰まっていて、ハマっていく人は多いんです」

 堀本さんは、初心者だったお笑い芸人で芥川賞作家の又吉直樹さんに2年かけて俳句の指導をした。

「又吉さんは最初、俳句が怖いと言っていました。それは俳句の奥深さを感覚的に理解していたからでしょうね。最初から言語感覚が優れていて、吸収するのが早かった。最終的には俳句が楽しいと言ってくれました。俳句の世界に入るのは簡単です。皆さんにも、この楽しさを味わってほしい」

 せっかく俳句を作るのなら、優れた句を作りたいもの。ポイントは、読み手に想像させることだ。

「5・7・5の中ですべて説明され、完結している “報告句”は悪い句の代表例です。それ以上イメージが膨らみません。逆に、映像が浮かんでくる句は、いい俳句が多いですね。想像の余地があり、そこから物語が広がります」

 俳句には学校のテストなどと違って、これが正解、というものはない。その果てしなさが面白さだと堀本さん。

「ぼくも常に自作の探究を続けていますが、本当に果てしない。でも、それがもっといい句を作りたいという表現欲に繋がります。そういう意味で、ゴールがない奥深さが俳句の魅力だと思います」

◆俳句の基本的なルール

『5・7・5の定型』
『季語を入れる』

「5・7・5に当てはまらない字余り・字足らずになる破調の句や、定型にこだわらない自由律俳句、季語のない無季俳句もありますが、初心者はまずは有季定型にチャレンジしましょう」(堀本さん)

◆上達のコツ

「多作多捨という言葉があります。たくさん作ってたくさん捨てる中で、よい句が生まれてくる。もう1つは、多くの作品を読むこと。特に先人たちの優れた句を鑑賞するのはお勧めです。それを継続していくと、少しずつ上達します」(堀本さん)

◆堀本さんが選んだ一句

春の鳶寄りわかれては高みつつ──飯田龍太

 飯田龍太は、戦後を代表する俳人の1人。俳壇に大きな影響を与えた。相寄ったり別れたりしながら、ゆっくりと空の高みへと飛翔し続ける春の鳶を描いた句。

「1946年に読まれたこの句は、単に鳶が舞う情景を描いているだけでなく、終戦後の作者の境遇や心情が暗に秘められていることに俳句の奥深さを教えられました」(堀本さん)

※女性セブン2018年8月16日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

日本のブライダルファッションの先駆け的存在、桂由美さん
《芸能人も多数着用》桂由美さんが生前嘆いていた「ナシ婚」 ウエディングドレスで「花嫁を美しく幸せにしたい」強い思い
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
小野寺さんが1日目に行った施術は―
【スキンブースター】皮下に注射で製剤を注入する施術。顔全体と首に「ジュベルック」、ほうれい線に「リジュラン」、額・目尻・頰に「ボトックス」を注入。【高周波・レーザー治療】「レガートⅡ」「フラクショナルレーザー」というマシンによる治療でたるみやしわを改善
韓国2泊3日「プチ整形&エステ旅行」【完結編】 挑戦した54才女性は「少なくとも10才は若返ったと思います!」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
日本人パートナーがフランスの有名雑誌『Le Point』で悲痛な告白(写真/アフロ)
【300億円の財産はどうなるのか】アラン・ドロンのお家騒動「子供たちが日本人パートナーを告発」「子供たちは“仲間割れ”」のカオス状態 仏国民は高い関心
女性セブン
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン