『Chabacco』は、たばこのパッケージをモチーフにした、スティックタイプのお茶。デザインやネーミングのユーモラスなアイディアだけでなく、本格的なお茶を手軽においしく楽しめる逸品でもある。ぜひ『Chabacco』の開発物語を読みながら一服してほしい。
静岡県といえば、富士山と並んで「お茶」を思い浮かべる人は多い。ところが、そんなイメージとは裏腹に、近年の“日本人の急須離れ”の影響もあってか、静岡のお茶を手土産にする人は意外にも少ない。そうした現状を打開すべく、静岡のおいしいお茶を世界中に広めたいと考案されたのが『Chabacco』だ。
開発したのは、静岡出身の森川翔太さんが代表を務めるショータイム。3年前、森川さんがアメリカ旅行に静岡のお茶を手土産として持参したところ、「登山やキャンプで飲みたい」と、たいそう喜ばれたという。そこで森川さんは、どこにでも持ち運びができて、温度や蒸らし時間を気にせず、水やお湯にとかすだけで飲めるスティックタイプの日本茶の開発を思いついた。
“お茶を携帯する”というところから、長い間、最適なサイズ感で持ち運ばれてきた、たばことお茶をかけて『Chabacco』と名付けた。昔からお茶を保存するための桐箱は「茶箱」と呼ばれていること、そしてお茶もたばこも「一服」という言葉を使うといった共通点もある。パッケージには、外国製たばこを模したデザインを取り入れた。
原料の茶葉は、急須用として使用しても遜色ない高品質の掛川産100%を使用。また、お茶の風味を最大限引き出すために、生産者とともに納得いくまで茶葉そのものを粉末化することにこだわった。その後の、粉末をスティックに入れる作業は工場で行われるが、粒子が細かいうえに梱包するスティックのサイズも小さいため、この作業には手間と時間がかかる。協力してくれた生産者、工場の涙ぐましい努力のおかげで、構想から約2年の月日を費やし、ついに完成した。
当初、インターネットを通して認知度を上げようと計画していたが、掛川市役所の担当者の目にとまり、市内の土産物店で販売をすることになった。ただお茶を売るだけではつまらないと考えた森川さんは、古いたばこの自動販売機を改造して「Chabaccoの自動販売機」を作り、実演販売を行った。そしてこの、少し変わった自販機でスティック茶を買うという行為が、楽しさという付加価値を生み、メディアも注目。若者からも好評価で、都内の催事場で購入したという男子高校生は、おいしさに感激して、翌日また森川さんの元を訪れてくれたという。
従来の急須でいれるお茶にだけこだわるのではなく、新しいお茶の飲み方を提案することが、若い世代にも日本茶のおいしさを伝えていくことになるのかもしれない。
※女性セブン2018年8月16日号