東京・京橋で97年
使用する鶏肉はいわゆる銘柄鶏や地鶏ではない。しかし信頼する卸売業者に鶏の飼料や飼育日数を細かく指定し、条件を満たした鶏だけを内臓付きの丸鳥で仕入れている。店で毎朝さばいて串打ちしているため、新鮮で臭みがないのだ。
コース一串目、天城産わさびを添えたささみは、しっとりと弾力があり虜になる。タレで食べるレバーはとろりと柔らかく、次の砂肝串との食感の違いを楽しみたい。葱巻は身がしっかりと締まった千住ネギにモモ肉とムネ肉の2種を巻き、タレで焼いたもの。団子は鶏肉を店でミンチにし、隠し味に麻の実が入る。しかし余計なつなぎは一切使われず、成形から焼きまで、職人の熟練の技が必要だ。
そして皮身、モモ肉、合鴨、手羽へと続く。丁寧な串仕事は、約1世紀の間に受け継がれてきた伝統の技である。ゆっくりと噛み締めたい。
撮影■岩本 朗
※週刊ポスト2018年8月31日号