危険が伴う場面で指導者に感情をぶつけられると、指導される側は自分が熱心に指導されている、きちんと見てもらえているという感覚を抱くのではないだろうか。2012年に発覚した、大阪市立高校の部活動での、顧問による体罰がいい例だ。体罰を受け、全国大学体育連合が調査を実施したところ、体罰を振るわれた経験のある学生のうち6割が「体罰や暴力は必要」と考え、体罰経験のある学生の方が「将来はスポーツ指導者になりたい」と回答しているという結果が出ているのだ。

 速見コーチ自身も、自身が経験した暴力を交えた指導に対して、「教えてもらえたという感謝の気持ちがあった」と語った。そこにはポジティブな感情があったことがわかる。そのため、自らが受けてきた指導に対する疑問も、自らの指導法に対しての疑問も持つことはなかったのだ。また、世代間で連鎖する間に、社会環境も世間の認識も変化している。当時はそんなものかと思われていたことが、今は社会的に容認されないこともある。だが、どういう理由・時代であれ暴力は許されない。そこに気付くことが、世代間連鎖を断ち切る最初のステップである。

 今後、速見コーチが指導する際、選手らの気の緩みやミスによる危険をどうわからせるのか…? 経験は連鎖するだけに、注目が集まる。

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