ライフ

老人性を消し去る努力をすることが、品格のある衰退に繋がる

理想の老い方とは

 脚本家・内館牧子氏(69)の小説『すぐ死ぬんだから』が売れている。78歳の主人公・忍ハナは実年齢より10歳は若く見え、銀座を歩けば“お洒落なシニア”の街頭スナップのモデルを探す雑誌編集者に声をかけられるほど、ファッションや体型維持に気を使う女性だ。40年以上連れ添う夫の岩造は、麻布の老舗酒屋の跡取りで、ハナは酒屋の女将さんとして奔走したのち、息子・雪男に店を譲って夫ともどもリタイアした。

 高校の同窓会で〈バアサンくささに磨きがかかっている〉同級生たちへの優越感に浸りながら、ハナは嫉妬と羨望を浴びる。だが、今を楽しむことに専念するハナは、ある日、岩造が自宅で倒れたことから、予想だにしなかった事実を知ることになる──。

 厚労省が今年7月に発表した昨年の日本人の平均寿命は、男女ともに過去最高を記録した。内館氏が語る。

「昔と違って今は職場と墓場の間が長くなりました。以前は55歳で定年になって65歳で死ぬ人も大勢いたけど、今は100歳近くまで生きるわけでしょう。60歳で定年しても、40年もある。いくら“すぐ死ぬんだから”と言っても、実際にはなかなか死ねない時代です。

 でも、年を取れば誰しも退化して鈍くなり、寂しがります。それでいて、“すぐ死ぬんだから”とこぼす割りには、孫自慢や病気自慢、元気自慢をすることもある。

 私は、そういった『老人性』を自分で消し去っていく努力をすることが、今の時代に“余生”を送らなければならない私たちがするべき『品格のある衰退』なのではないかと思います」

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン