今年6月にダイハツが発売した新型軽自動車『ミラ トコット』が、翌月には月販目標台数の3倍となる約9000台を受注し、好調だ。その理由は、時代に合ったシンプルなおしゃれさと誰にでも運転がしやすい機能を両立させたこと。開発に生かされたのは、女性プロジェクトメンバーの“実感”だった。
免許を取得したばかりの若者や女性ユーザーに向けて開発された、誰でも運転しやすく、扱いやすいと好評な軽自動車『ミラ トコット』。
女性ならではの視点を生かそうと、商品企画や製品企画、デザインなど部門の垣根を越えて、ターゲットに近い女性社員7名が集められ、彼女たちを中心に企画が進められた。
最初に取り組んだのが、“盛ってかわいくする”という従来の“女性の好みのイメージ”からの脱却だった。
開発着手に先立って、時代に則したシンプルでカジュアルなかわいらしさを、企画の決定権をもつ中高年の男性社員にも理解を得られるよう、わかりやすく伝えることから始まった。
以前販売していた女性向け軽自動車『ミラ ココア』の開発時期である2007年当時と現在のファッション誌を比較して見せたり、最新家電のデザインのトレンドを調べたり、時代に合った“かわいらしさ”を男性社員にわかってもらうのに、注力した。
「女性同士ならニュアンスで伝わることが、男性にはまったく伝わらなかった」と笑うのは、製品企画部の木村友喜さん。
最終的には「“おじさんにはわからない”というところにこそ、よさがある」と男性社員が納得してくれ、後押ししてくれるようになったという。
次の課題は、デザインと機能面を両立させること。メインの購買層となる女性は、運転においてどんな不安をもっているのか、試乗会を開いて改めて調査した。「運転席からボンネットの先が見えないと、車体感覚が掴みにくい」「後ろ上がりになっているベルトラインは、バック駐車の際に見通しが悪い」など、課題が明らかになり、一つひとつを解消していった。
内装も徹底してシンプルにこだわった。小物入れやドリンクホルダーなど、いろいろついている方が便利だと思いがちだが、実際に使う物は少ないのではないかと気づいた。
助手席前方に装備されていることが多いトレーや受け皿を取り除き、白い陶器のような質感の装飾パネルを採用して、スッキリさせた。それと同時に、使用頻度の高いドリンクやスマートフォンのホルダー、ティッシュBOXを、取り出しやすい位置に置ける工夫もした。
さらに、2台分のスマホが充電できるUSB電源ソケットを搭載するなど、現代のニーズに合った装備も施した。こうして『ミラ トコット』は完成した。
初めて車を購入する若年層は、手に取りやすい価格に注目した。次第に、ある程度の運転経験があり、じっくり機能を吟味する堅実志向派からも選ばれるようになった。試乗会で調査を重ねて女性が運転しやすい構造にこだわったことが、安全面に重きを置くシニア世代の購入にもつながった。
発売からわずか3か月、早くも『ミラ トコット』は世代を超え、女性全般に愛される1台となった。
※女性セブン2018年10月4日号