以前の大阪は食いだおれ、グルメの街であると、自他ともにみとめていた。だが、首都のメディアは、京都の料理店ばかりをとりあげるようになっている。大阪のことは、タコ焼きとウドンの街ででもあるかのように、あつかいだした。おかげで、今は食文化という点でも、京都のほうが強く印象づけられるにいたっている。
京都も大阪も、あいかわらず東京なにするものぞといった声を、あげつづけている。そのいっぽうで、大阪は京都を批判的にながめる、その度合いを強めてきた。あいつらは、東京のメディアで虚像をふくらまされ、調子にのっている、と。
そして、京都のほうもブランド価値の高められない大阪を、ますます見下すようになった。東京に追い抜かれた京都と大阪だが、連帯しあう方向へはむかわない。むしろ、たがいの反目を深めている。関西人の「東京ぎらい」も、一筋縄ではいかないようである。
●いのうえ・しょういち/1955年京都府生まれ。京都大学工学部建築学科卒業。同大学院修士課程修了。建築史、意匠論が専門。『関西人の正体』『つくられた桂離宮神話』『美人論』『南蛮幻想』『京都ぎらい』など著書多数。
※SAPIO2018年9・10月号