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2018.10.14 16:00  NEWSポストセブン

チューブ調味料がかつてない活況 進む個食化も後押しか

調味料の様式も時代と共に変遷(写真:アフロ)

 普段料理をしない人が最近のスーパーマーケットをつぶさに観察すると「チューブの増殖」に驚くのかもしれない。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が指摘する。

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“チューブ型調味料”の躍進が目覚ましい。わさびやからしといったスタンダードな薬味だけでなく、最近は柚子こしょうやホースラディッシュといった肉に合う薬味も増えた。極めつけは、昨年ヱスビー食品が発売した「きざみパクチー」。苦手な人は徹底的に苦手な食材だが、何度かのブームを経て、パクチーはこの数年で調味料として定着。薬味系チューブ調味料はかつてない活況を呈している。

 薬味系ばかりではない。近年の調味料のチューブ化を加速させたのは、中華系調味料だ。先鞭をつけた味の素の「クックドゥ 香味ペースト」は2011年に中部・北陸7県限定で発売した後、翌年の2012年から本格展開。発売3か月で初年度の販売目標を達成した。以来、ヱスビー食品やユウキなど中華系調味料の大手メーカーも、豆板醤や甜麺醤といった調味料のチューブを前面に押し出した展開に乗り出した。

 瓶入りの調味料とは異なり片手で扱うことができ、スプーンなどの洗い物も出ない。家庭のキッチンで作業する者にとって、手数をひとつでも減らすのは至上命題であり、実際それまで売上が横ばいだった中華系調味料はチューブ系調味料の投入でマーケットの拡大に成功した。

 そもそも国内メーカーが樹脂チューブ入りに大きく舵を切ったのは1960年代のこと。最初はマヨネーズだった。現代ではマヨネーズと言えばキユーピーと味の素の製品がスーパーの棚にずらりと並んでいるが、ことここに至るには様々な展開があった。

 日本で初めて市販されたマヨネーズは、現代でも代名詞のような存在となっているキユーピーマヨネーズだと言われている。1925(大正14)年、関東大震災後の復興をきっかけに西欧化が進むなか、「マヨネーズ」という新しい調味料が発売された。初年度の売上はわずか600kg。当時は整髪料と間違えられることすらあったが、1941(昭和16)年には約500トンもの出荷を記録したという。

 その人気は当時の新聞からも伺える。戦時下でマヨネーズが入手困難になった1942(昭和17)年の新聞では「野菜の生食がさかんにすすめられてゐるが、これをおいしく喰べる野菜サラダにつきもののマヨネーズ・ソースがさつぱりない」とマヨネーズ不足を嘆き、「重宝な代用マヨネーズ」として、油、小麦粉、砂糖、酢、だし汁などで作る代用マヨネーズのレシピを提案しているほどだ(朝日新聞1942年3月26日朝刊)。

 話がマヨネーズで塗りたくられそうなので、話をチューブに戻そう。第二次世界大戦後、1948(昭和23)年にマヨネーズの生産を再開したキユーピーは1958(昭和33)年、「ポリボトル容器」のマヨネーズを発売する。ここから日本のチューブ調味料の本格的な歴史が始まる。1966(昭和41)年にはカゴメが「ケチャップ世界初」のチューブ型容器を採用。この頃からマヨネーズ、ケチャップのメーカーは、一気に樹脂チューブ容器を採用しはじめ、生産量は一気に増えていく。

 さらに1972年、ヱスビー食品がねりわさびをチューブ型の容器で発売する。一度に少量の使用しか見込めず、「生」の保存が難しい調味料という意味では現代のパクチーにも通じる開発の背景が伺える。

 そして個食化も進んだ今年2月、ヱスビー食品が「フライパン1つで、「煮込まず」「少ない材料」「1人前から作りたい分だけ」カレーを作ることができる」チューブ型のカレーペースト「炒(チャー)カレー」を発売した。

 チューブ調味料は時代ごとに微妙にそのニーズが異なる。高度成長期のマヨネーズ、ケチャップという「消費促進」期があり、その後、食が豊かになった時代にはわさび、からしのように「少量使用ニーズ」を満たした。そこにパクチーや中華系調味料のような「多様な食」という要素が加わった。今年発売されたヱスビーのチューブカレーは、「手軽な個の自炊」という新地平を拓くことができるか、注視していきたい。

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