米朝が30分以上かけていた噺を、たまは枝葉を刈り取って20分足らずに再構成。大仰な人情噺テイストを取り除き、あくまで軽やかにテンポ良く聴かせる。ラストのドンデン返しにも工夫があり、従来のわかりにくいサゲを排してスッキリさせた。たまの「古典の現代風アレンジ」の才が遺憾なく発揮された逸品だ。

 もう1人のゲスト桂文治が柳家喬太郎が掘り起こした『擬宝珠』を演じた後、たまはショート落語(オリジナル小咄)を幾つか披露してから、トリネタは最新作落語『プロレス』。プロレス好きな先輩がプロレス博物館に後輩を連れて行って啓蒙する噺で、プロレスの本質を突きながらあくまでバカバカしく笑わせる。

 10月からたまは東京での定例独演会の場を深川江戸資料館に移し、毎月開催する。いよいよブレイクか!?

●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『噺は生きている』など著書多数。

※週刊ポスト2018年10月26日号

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