国際情報

80歳で孤独死した老人の子供に刑罰 中国社会に危機感も

幸せな晩年を迎えられるか(写真:アフロ)

 来るべき超高齢社会において、人生の終盤をどう過ごすかは誰もが気になるテーマだ。それは中国人とて同じ。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。

 * * *
 日本と同じように、高齢化の深刻な足音がひたひたと中国社会に迫ってきている。高齢化のスピードは日本以上に速いとの予測もあるなか、それを象徴するようなある事件の裁判が人々の関心を集めた。

 共産主義青年団の機関紙『中国青年報』が報じた記事のタイトルは、〈老いた父を家中で孤独死させた五人の子女に刑罰 政府はこの事件の顛末をCD資料として全県住民に見せた〉である。

 四川省綿陽市平武県の一軒の農家が舞台となった。80歳の老人には子供が5人いたが、それぞれ出稼ぎなどで家を空けていた。

 老人は2016年から2017年にかけて6度入院したというが、子供たちはここにもほとんど顔をださなかったという。

 すでに親子関係は崩れていたということになるが、そのこともあって老人は、一度、子供たちを相手に「扶養の義務を履行させるための法的手段」を地元の法律事務所を訪れて相談していたとも伝えられる。

 つまり孤独死という悲劇は、想定されるべく環境であったのだろう。

 さて、老人の死後、法廷に立たされた5人の子供たちが問われたのは扶養の義務違反であり、また遺棄罪であった。懲役2年が言い渡され、あるものは即日服役となり、あるものは執行猶予2年となった。

 ちなみに遺棄罪は刑法261条に定められたもので、5年以下の懲役となる。日本にも同じく遺棄罪はあり、生存にかかわる遺棄の場合は、はやり5年以下となっている。

 それにしても中国らしいのは、ここからの展開である。地元政府がこの事件を資料CDとしてまとめ、県の住民を集めて上映会を開いたというのだ。プライバシーの問題など、どうでもいいのだろう。ただ、この政府の行動からは地方にとどまらない、中国社会全体に通じる危機感が読み取れる。

 記事のなかでは、子供からの支援が受けられない老人の問題に取り組む専門家の話が紹介されているのだが、それによればこの平武県のケースは決して珍しいものではないというのだ。

 まさに金の切れ目が縁の切れ目。親子といえども厳しい現実は迫ってきているということなのか。

関連キーワード

トピックス

懲役5年が言い渡されたハッシー
《人気棋士ハッシーに懲役5年判決》何度も「殺してやる」と呟き…元妻が証言した“クワで襲われた一部始終”「今も殺される夢を見る」
NEWSポストセブン
群馬県前橋市の小川晶市長(42)が部下とラブホテルに訪れていることがわかった(左/共同通信)
【前橋市長のモテすぎ素顔】「ドデカいタケノコもって笑顔ふりまく市長なんて他にいない」「彼女を誰が車で送るかで小競り合い」高齢者まで“メロメロ”にする小川市長の“魅力伝説”
NEWSポストセブン
関係者が語る真美子さんの「意外なドラテク」(getty image/共同通信)
《ポルシェを慣れた手つきで…》真美子さんが大谷翔平を隣に乗せて帰宅、「奥さんが運転というのは珍しい」関係者が語った“意外なドライビングテクニック”
NEWSポストセブン
『ウルトラマン』の初代スーツアクター・古谷敏氏(左)と元総合格闘家の前田日明氏
《「ウルトラマン」放送開始60年》スーツアクター&格闘王の特別対談 前田日明氏「絶対にゼットンを倒すんだと誓って格闘家を志した」
週刊ポスト
部下の既婚男性と複数回にわたってラブホテルを訪れていた小川晶市長(写真/共同通信社)
《部下とラブホ通い》前橋市・小川晶市長、県議時代は“前橋の長澤まさみ”と呼ばれ人気 結婚にはまったく興味がなくても「親密なパートナーは常にいる」という素顔 
女性セブン
イケメンとしても有名だった丸山容疑者
《殺人罪で“懲役19年”を支持》妻殺害の「真相を知りたい」元長野県議・丸山大輔被告の控訴を棄却…老舗酒造「笑亀酒造」の現在
NEWSポストセブン
群馬県前橋市の小川晶市長(42)が部下とラブホテルに訪れていることがわかった(HPより)
《ミニ・トランプ化する日本の市長たち》全国で続発する市長の不祥事・トラブル ワンマンになりやすい背景に「米国大統領より強い」と言われる3つの“特権”
週刊ポスト
ファーストレディー候補の滝川クリステル
《ステマ騒動の小泉進次郎》滝川クリステルと“10年交際”の小澤征悦、ナビゲーターを務める「報道番組」に集まる注目…ファーストレディ候補が語っていた「結婚後のルール」
NEWSポストセブン
男性部下と“ホテル密会”が報じられた前橋市の小川晶市長
「青空ジップラインからのラブホ」「ラブホからの灯籠流し」前橋・42歳女性市長、公務のスキマにラブホ利用の“過密スケジュール”
NEWSポストセブン
八田容疑者の祖母がNEWSポストセブンの取材に応じた(『大分県別府市大学生死亡ひき逃げ事件早期解決を願う会』公式Xより)
《別府・ひき逃げ殺人の時効が消滅》「死ぬ間際まで與一を心配していました」重要指名手配犯・八田與一容疑者の“最大の味方”が逝去 祖母があらためて訴えた“事件の酌量”
NEWSポストセブン
東京・表参道にある美容室「ELTE」の経営者で美容師の藤井庄吾容疑者(インスタグラムより)
《衝撃のセクハラ発言》逮捕の表参道売れっ子美容師「返答次第で私もトイレに連れ込まれていたのかも…」施術を受けた女性が証言【不同意わいせつ容疑】
NEWSポストセブン
「ゼロ日」で59歳の男性と再婚したという坂口
《お相手は59歳会社員》坂口杏里、再婚は「ゼロ日」で…「ガルバの客として来てくれた」「専業主婦になりました」本人が語った「子供が欲しい」の真意
NEWSポストセブン