ジャーナリストという仕事を根本的に理解していない人も、たくさんいるようです。安田さんや、安田さんのように危険な場所に取材に行ってくれる人がいなかったら、たとえばシリアがどんなひどい状況になっているか知ることはできません。安田さんが拘束されたニュースをきっかけに、シリアという国を知り、目を向けた人も多いでしょう。無事に帰った今だから言えますが、安田さんは立派な仕事を成し遂げました。
「しょせん金目当てで行ったんだろう」とゲス顔で言う人もいます。紛争地帯に身を投じて多少の仕事につながったしても、リスクの大きさに比べたらまったく割に合いません。まして「有名になりたいだけだろ」という見方は笑止千万。たしかに安田さんはこうして有名にはなりましたが、おかげで的外れな批判にさらされています。戦う人を笑うだけの「戦わないヤツら」に見事になっていることに、きっと本人は気づかないんですね。
帰国する飛行機の中で取材を受けて話した内容にイチャモンをつけたり、すぐに記者会見を開かなかったことを責めたりする声もあります。安田さんは帰国してすぐ、妻を通じて「おかげさまで無事、帰国できました。可能な限りの説明をする責任があると思います。折を見て、説明させていただきます」という談話を発表しました。
解放されて間もない、きっとまだ気持ちの整理も何もついてなかったタイミングだっただろうに、飛行機の中で取材に応じただけでも、十分に立派ではないでしょうか。命からがら3年4か月ぶりに帰って来て、やっと家族に会えたんです。やがて開いてくれるであろう記者会見を待てないなんて、ずいぶんせっかちで、ずいぶん酷ですね。
批判している人に、そういう厳しい要求に応えられるほどの精神力や覚悟があるとは、まったく思えません。スマホ片手に威勢よく他人を罵倒しているときの顔は、きっと見られたもんじゃないでしょう。本人は無自覚なのがせめてもの救いです。
ことほど左様に、安田さんへのバッシングに精を出す人たちに対しては、どんなに憐れみの目を向けても憐れむ要素に事欠きません。憐れまれているみなさんも、もしかしたらこんなことを書いている私を憐れんでくださるでしょうか。同病相憐れむですね。いわば仲間ってことで、みなさんになるべく幸多かれと祈らせていただきます。