国内

スマホで安田さん批判に精出す人は憐れむ要素に事欠かない

帰国した安田純平氏(時事通信フォト)

 ジャーナリストが無事生還することで迷惑を被る人はいないはずである。しかし案の定、議論は巻き起こってしまった。コラムニストの石原壮一郎氏が指摘する。

 * * *
 本当に嬉しいニュースです。無事のご生還、おめでとうございます。シリアで武装組織に拘束され、3年4か月ぶりに解放されたジャーナリストの安田純平さん(44)が、10月25日夜に帰国しました。生きて帰ることを信じて待ち続けた両親や妻と再会し、さっそく母親の手作りのおにぎりやきんぴらごぼうをおいしそうに食べたとか。ご本人やご家族の喜びはいかばかりか。いやあ、よかったよかった。

 ……という話では済まないのが今の日本の、いや、もしかしたら人の世の残念さであり情けなさ。腕まくりして待ち構えていたかのように、ネット上ではバッシングの嵐が吹き荒れています。悲しいかな予想通りの展開です。いつ命を奪われるかわからないギリギリの状況を生き抜き、奇跡的に帰ってこられた人を非難して、何が楽しいのでしょうか。

「そっか、よかったね。でも、とくに興味ないかな」と感じるのは、まだわかります。毎日いろんなニュースがあるし、しょせんは知り合いでも何でもない人の話ですから。しかし、バッシングに精を出している方々は、積極的に関心を持って非難する理由を全力で捜し出し、手間と時間を使ってSNSなどに書き込んでいます。暇なんでしょうか。

 ネットだけじゃなくてリアルでも、安田さんを批判して悦に入っている人は少なくありません。そういう人を見て腹を立てるのも不毛だし、近づくと邪悪なオーラに巻き込まれてなおさら不愉快になります。「いや、そうじゃなくて」と反論したところで、話が通じる気もしません。ここは反発や怒りではなく、憐みの目を向けることにしましょう。

 手あかのついた「自己責任論」を振りかざして、危険な場所に行くのが悪い、そんなヤツを助ける必要なんてないと言っている人は、自分は常に安全な場所から石を投げつける側にいるという根拠のない自信を持っています。想像力のなさや叩ける相手を見つけて喜んでいるお人柄の醜さがにじみ出てしまっていますが、まあそれこそ自己責任ですね。

 安田さんが拘束されたときの状況や解放に至った経緯は、まだ何もわかっていません。しかし、一部の報道を受けて「間接的にせよ、税金を使って身代金を払うなんてケシカラン!」と憤っている人がたくさんいます。「税金を使って」と言えば自分の主張が自動的に正当性を持つと思っている単純さ、飲食店で「俺は客だぞ」と威張る人と同じく、「納税者」という強そうな立場を振りかざしたがるセコさに、ある種の悲しみを覚えずいられません。

関連キーワード

トピックス

万博で身につけた”天然うるし珠イヤリング“(2025年8月23日、撮影/JMPA)
《“佳子さま売れ”のなぜ?》2990円ニット、5500円イヤリング…プチプラで華やかに見せるファッションリーダーぶり
NEWSポストセブン
次の首相の後任はどうなるのか(時事通信フォト)
《自民党総裁有力候補に党内から不安》高市早苗氏は「右過ぎて参政党と連立なんてことも言い出しかねない」、小泉進次郎氏は「中身の薄さはいかんともしがたい」の評
NEWSポストセブン
阪神の中野拓夢(時事通信フォト)
《阪神優勝の立役者》選手会長・中野拓夢を献身的に支える“3歳年上のインスタグラマー妻”が貫く「徹底した配慮」
NEWSポストセブン
9年の濃厚な女優人生を駆け抜けた夏目雅子さん(撮影/田川清美)
《没後40年・夏目雅子さんを偲ぶ》永遠の「原石」として記憶に刻まれた女優 『瀬戸内少年野球団』での天真爛漫さは「技巧では決して表現できない境地」
週刊ポスト
朝比ライオさん
《マルチ2世家族の壮絶な実態》「母は姉の制服を切り刻み…」「包丁を手に『アンタを殺して私も死ぬ』と」京大合格も就職も母の“アップへの成果報告”に利用された
NEWSポストセブン
チームには多くの不安材料が
《大谷翔平のポストシーズンに不安材料》ドジャースで深刻な「セットアッパー&クローザー不足」、大谷をクローザーで起用するプランもあるか
週刊ポスト
ブリトニー・スピアーズ(時事通信フォト)
《ブリトニー・スピアーズの現在》“スケ感がスゴい”レオタード姿を公開…腰をくねらせ胸元をさすって踊る様子に「誰か助けてあげられないか?」とファンが心配 
NEWSポストセブン
政権の命運を握る存在に(時事通信フォト)
《岸田文雄・前首相の奸計》「加藤の乱」から学んだ倒閣運動 石破降ろしの汚れ役は旧安倍派や麻生派にやらせ、自らはキャスティングボートを握った
週刊ポスト
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《不倫報道で沈黙続ける北島康介》元ボーカル妻が過ごす「いつも通りの日常」SNSで垣間見えた“現在の夫婦関係”
NEWSポストセブン
秋篠宮家の長男・悠仁さまの成年式が行われた(2025年9月6日、写真/宮内庁提供)
《凜々しきお姿》成年式に臨まれた悠仁さま 筑波大では「やどかり祭」でご友人とベビーカステラを販売、自転車で構内を移動する充実したキャンパスライフ
NEWSポストセブン
自身のYouTubeで新居のルームツアー動画を公開した板野友美(YouTubeより)
《超高級バッグ90個ズラリ!》板野友美「家賃110万円マンション」「エルメス、シャネル」超絶な財力の源泉となった“経営するブランドのパワー” 専門家は「20~30代の支持」と指摘
NEWSポストセブン
志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン