芸能

篠田三郎 稽古場とまるで異なる杉村春子先生の背筋

篠田三郎が先輩女優の思い出を語る

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、俳優・篠田三郎が、舞台で共演してきた主演女優との思い出について語った言葉をお届けする。

 * * *
 東宝の『細雪』に二〇〇一年から一二年まで出演し続けるなど、舞台での篠田三郎は多くの主演女優と共演してきた。

「これは女房に褒められることがあるんですが『相手役の女優さんのお芝居の邪魔にならないのに、存在感はある』と。身びいきかもしれませんが、そんな言葉に励まされて今日までやってきています。

 舞台には本当に恵まれてきました。忘れられないのが、森光子・杉村春子夢の共演と銘打った『木瓜の花』という舞台です。杉村先生の役が昔好きだった人に似た青年というのが私で、歳は違えど相手役です。

 稽古場にいらした先生は、失礼ですがかなりのお年寄りに見えました。ところがゲネプロの時の若々しい着物姿にびっくりしたんです。背筋が伸びて凜として稽古場とまるで違ったオーラでした。日を追うごとに先生の魅力に惹かれていきましたね。

 ある時杉村先生に楽屋に呼ばれ『舞台は後ろのお客様にもしっかりと台詞が聞こえなくてはダメ。しっかり大きな声を出しなさい』と叱咤されたんです。今なら当然のことですが、当時は舞台経験が少ないので勉強になりました。毎日先生の楽屋にお邪魔してお茶をいただきながら『今日の駄目出しは?』などと軽口をたたいていましたね。

 役所広司さんがある時芝居を観に来てくれたことがあって、帰りに一杯やった時に『篠田さんは女優さんの相手役が多くって受け身で寡黙な役柄が多いですよね。それもいいけど、やたらと喋りまくって、動き回って、今までとは全く違う役をやったら面白いんじゃないですか』と言われたことがありました。

 彼はそうやって役の振幅を心がけていたんですよね。その後、私も舞台でコメディやアル中役など色々な役をやらせていただきました。今はどんな役も面白がりながら膨らませていきたいと思っています」

関連キーワード

関連記事

トピックス

和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
犯人の顔はなぜ危険人物に見えるのか(写真提供/イメージマート)
元刑事が語る“被疑者の顔” 「殺人事件を起こした犯人は”独特の目“をしているからすぐにわかる」その顔つきが変わる瞬間
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン