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日本の伝統絵画からわかる「美人の美術史」

昭和を代表する日本美人・若尾文子(共同通信社)

 美しい女性はいつの時代も男性のみならず女性にとっても憧れの的であった。その「美人」の基準は時代ごとに大きく移ろってきたと言える。美人の特徴が変化してきたことは、日本の伝統絵画にも見て取れる。東京藝術大学美術学部美術教育・美術解剖学II研究室助教の宮永美知代氏が解説する。

 * * *
 日本人の頭部の骨格は、狭顔で奥行きがある西欧人に対し、奥行きが短く幅広です。明治時代まで日本の絵画では伝統的に陰影やそれに伴う奥行きを描いてきませんでした。日本人の平板な顔面の特徴も少なからず影響していたであろうと思われます。

 日本人の顔の直接的なルーツは、四角く起伏のある顔立ちをした二重瞼の南方系の特徴を持つ縄文人と、のちに大陸からやってきた顔立ちが広くのっぺりとした一重瞼の北方系である弥生人です。一般に平板とされる日本人の顔は弥生形質がより強く表われているといえます。現在では「弥生顔」が多いですが、「縄文顔」も見られます。

 平安時代末期の『源氏物語絵巻』では、下膨れの丸い顔に細い目と低い鼻の「引目鉤鼻」が特徴的な弥生顔が宮廷の美人として描かれています。

 江戸時代には瓜実顔で顎も細く鼻筋が通ったタイプの骨格が登場します。江戸後期の喜多川歌麿の頃になると、美人の顔は極端に面長に描かれるようになります。それが当時求められた美人だったのでしょう。

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