実際、IT業界では無名な人物でサイバーセキュリティ分野での手腕も未知数。内閣府や経産省でどんなアドバイスを行なっていたかは明らかにされていないが、そんな人物を起用した任命権者の安倍首相や世耕経産相の「見る目」が問われた。
内閣官房参与にも、行動が問題視された人物がいる。文化庁文化財部長やユネスコ大使を経験した木曽功氏だ。
木曽氏はそのキャリアを買われて2014年に安倍首相から世界遺産登録活動をサポートする「文化関係施策担当」の内閣官房参与に任命されたが、その後、参与のまま加計学園理事と同学園が経営する千葉科学大学学長に就任した(2016年4月、同年9月に参与を退任)。
モリカケ問題が国会で取り上げられた昨年6月、前川喜平・元文科省事務次官は次官時代に内閣官房参与だった木曽氏が訪ねてきて、加計学園の獣医学部新設計画について「早く進めてほしいのでよろしく」と働きかけを受けたことを明らかにした。
内閣官房参与は就任にあたって首相から特命担当事項を指示される。木曽氏の担当は前述のように世界遺産登録の助言であり、安倍首相の指示がないのに担当外の獣医学部認可で動いたとすれば明らかに越権行為だ。
政治主導といいながら、安倍首相のブレーンである民間の内閣官房参与たちが「総理の威光」をかさに官僚に指示を出し、自分の理想とする政策をどんどん進めていく。このまま参与の力が肥大化していけば、国民の利益より、私益が優先される危険が拭えない。『立法過程』などの著作がある政治学者の岩井奉信・日本大学法学部教授が指摘する。