ジャーナリストの出井康博氏
本誌SAPIO7・8月号で触れたように、その大半は勉強よりも出稼ぎが目的の“偽装留学生”たちだ(注)。日本語学校の初年度の学費や留学斡旋ブローカーへの手数料支払いなどで150万円前後の借金を背負った彼らは、来日後に現実の厳しさを思い知る。いくらアルバイトに励んでも、日本語学校に支払う翌年分の学費も貯めなければならず、なかなか借金が減らない。
【注/留学生に認められる「週28時間以内」のアルバイトに目をつけ、留学を装い出稼ぎ目的で来日する若者が急増。本来、留学ビザは「母国から仕送りが見込め、アルバイトなしで留学生活を送れる外国人」に限り発給されるため、新興国からの留学生の多くが借金をしてブローカーに手数料などを払い、親の年収や預金残高などをでっち上げている】
2017年7月、東京都内の日本語学校に留学したベトナム人のトゥー君も、まだ100万円近い借金がある。来日以降、弁当の製造工場、宅配便の仕分け、ホテルの掃除などのアルバイトを経験してきた。いずれも日本人が嫌がって寄りつかない夜勤の肉体労働で、日本語能力がなくても雇ってもらえる仕事ばかりだ。アルバイトをかけ持ちし、留学生に認められる「週28時間以内」という制限に違反して働いていた時期も長い。
「1つのアルバイトでは(借金返済は)無理です。日本語学校の学費(の支払い)もある。だから(法律違反を犯し)アルバイトを2つやる。友だちには3つやっている人もいます」
そんな彼らを人手不足の企業が都合よく利用する。一方、トゥー君が借金を残したままベトナムに戻れば、担保に入れた両親の家や畑が没収されてしまう。そのため来年春に日本語学校を卒業した後は、専門学校か大学に“進学”し、出稼ぎを続けていくしかない。