「(進学先となる)悪い学校はたくさんあります。勉強しなくても(入学は)大丈夫。(トゥー君と同じ日本語学校の)ベトナム人は皆、悪い学校に行きます」
トゥー君がカタコトの日本語で言う「悪い学校」とは、入学金と学費目当てに留学生を受け入れる専門学校などのことだ。彼のような“偽装留学生”こそ、学校側にとっては「金のなる木」なのである。
制度上、留学生は日本語学校を「修了」すれば、日本語能力を問われず専門学校、さらには大学にも入学できる。そのため大学でも、“偽装留学生”が急速に増えつつある。日本語学校経営者が言う。
「日本語学校が“偽装留学生”の巣窟だと批判されますが、一部の専門学校や大学も同罪ですよ。日本語学校の出席率だけを見て合格させる学校は多い。出席率の高い留学生は学校から失踪せず、きちんと学費も払ってくれる。それが学校には何より重要なんです」
【PROFILE】いでい・やすひろ/1965年岡山県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。英字紙「ザ・ニッケイ・ウィークリー」記者、米シンクタンクの研究員等を経てフリーに。著書に、日本の外国人労働者の現実を取材した『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社+α新書)、『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社刊)などがある。
※SAPIO2018年11・12月号