ライフ

認知症の親が「狙われている」と言い出したらどうすべき?

悪口が止まらない認知症の親への対処法は?(イラスト/いぢちひろゆき)

 高齢化に伴う認知症発症は当たり前のことになりつつある。でも、親の介護を担う子世代は仕事や子育てに忙しく、更年期の不調と闘っていたりもする。頭では理解していても、親の言動にストレスが募って爆発寸前…。そこで、心理カウンセリングのプロに、迷走する親に耳を傾ける「傾聴」と、妄想にも冷静に対応できる「アンガーマネジメント」のテクニックを、実際によくある会話を例に伝授してもらった。

【教えてくれた人】
◆原千恵子さん(心理学博士・臨床心理士原心理相談室長)
◆田辺有理子さん(日本アンガーマネジメント協会アンガーマネジメントシニアファシリテーター)

■他人の悪口が止まらない!
「あのヘルパー、性格が悪いのよ」

「そんなふうに思ったのね。私はいい人だと思うけど…」

「悪口は寂しさの裏返し。その内容に同調したり肯定したりする必要はないけれど、今の気持ちを受け止めたことを言葉にしましょう。基本的には話を広げず受け流すのがよいのですが、『でもいい評判も聞くよ』などと、そこから派生した前向きな方向に話を振ってもよいでしょう」(原さん)

■子供が不快になることをわざわざ言う
「あなた今日、髪形がヘンね」

「あらそう? どうするといいかな?」

「不快にさせる発言の背景には、子供の気を引きたい気持ち、社会で活動する子供に対する劣等感、いつまでも親として子供の上にいたいという気持ちがあると思われます。真っ向から闘わず、できるだけ受け流す。でもどうしても腹が立つなら『私は気に入っているのよ』などと伝えてもよいでしょう」(田辺さん)

■事実でないことを平然と繰り返す
「幼なじみが訪ねて来たの」「私は狙われている」

「久しぶりに会えてよかったね」「大丈夫、安心して」

「年老いた親の妄想は子供にとって異次元で、事実確認に翻弄されることもしばしば。つい現実に引き戻そうと『そんなことあり得ないよ!』と躍起になればなるほど、親は『自分をわかってもらえない』と感じてしまいます。妄想とわかれば決して否定はせず、同じ妄想の世界で会話する余裕を。また、強い不安感の裏返しの場合もあるので、被害妄想にはやさしく寄り添って」(原さん)

■「迷惑ばかりかけて…」「私なんていない方がいいんだわ」

「そんなことはないよ。でももっと楽しい話をしよう」

「どうにもならない愚痴や悲観的な話を延々と聞かされるのはウンザリしますよね。まずは気持ちを受け止めて安心させた上で、聞くのがつらいことを伝えましょう。前向きな提案もおすすめ。提案が受け入れられるかどうかは期待せず、だめならすぐ引く。でも、提案することでこちらのガス抜きになります」(田辺さん)

※女性セブン2018年11月29日・12月6日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁/時事通信)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト