さいとう:最初、10話で終わるつもりだったんです。だからそのつもりでラストシーンを考えてしまった。いまでも頭の中に、コマ割りから台詞まで全部残っています。ところが、おかげさまでと言うべきなんでしょうが、編集部からも、読者の皆さんからも「もっとやれ」と尻をたたかれて、とうとう50年になってしまった。大いなるマンネリズムとも言われますが、私はマンネリで構わないと思っています。構造は同じでも、描いている人間ドラマは、毎回違いますから。
佐藤:私は、『ゴルゴ13』の構造は、先生の発明だと思っているんです。世界には調和や秩序があると私たちは信じています。この「予定調和の世界」をゴルゴは銃弾1発で壊していく。それは面白いと同時に、怖くもある。私たちは『ゴルゴ13』によって、むき出しになった人間の奥底に、はからずも触れてしまうのです。人間の欲望に終わりがないのと同じように、人間ドラマも無数にある。この作品には「構造」があるので、いつまでも続いていくでしょう。
さいとう:きっと私が続けられる間は、続けるしかないでしょうね(笑)。
※佐藤優、さいとう・たかを・著/『ゴルゴ13×佐藤優 Gのインテリジェンス』より