国際情報

徴用工判決の裏に映画の演出を真実と報じ続ける韓国メディア

演出のために書かれた朝鮮人強制労働の「悲劇の壁文字」

『慟哭の詩』と呼ばれる、韓国人には「強制連行の悲劇のシンボル」として広く知られた壁文字がある。福岡の筑豊炭田に残されているもので、一時期、ソウルの独立記念館にも模型が展示されていた。

 しかし、2000年1月、地元・西日本新聞が壁文字は映画ロケの際に演出として“後書き”されたものだったことを明らかにした。韓国人ジャーナリストの崔碩栄(チェソギョン)氏が解説する。

「1965年に朝鮮総連傘下の在日本朝鮮文学芸術家同盟という組織が日韓条約に反対する運動の一環として当時、映画を製作中でした。壁文字はそのロケの際に訪れたスタッフによって書かれたものだったのです」

 西日本新聞の取材に当時のスタッフは、〈(朝鮮人寮は)廃墟で、撮るものがなかった。監督が「(連行されてきた人々の)思いがあったほうがいいんじゃないか」と。その他のスタッフも「それがいい」となった〉と“演出”をあっさり認めている。

 にもかかわらず、その後もこの壁文字は韓国の公共放送局EBSが2014年12月に教養番組『e歴史チャンネル』で登場させている。番組では、福岡県筑豊炭田へ強制連行されて働かされた韓国人が、炭田の壁に「お母さん会いたい、腹が減ったよ、故郷に帰りたい」と書いたと説明がされた。

 しかし、1965年製作の韓国映画の演出のために描かれたものだったことが判明。韓国メディアでは“本物”として扱われ続けているのだ。

 たとえばハンギョレ新聞(2015年7月掲載)、朝鮮日報(2016年1月掲載)などで長崎・軍艦島の強制連行問題を取り上げた際にも転用され続けた。国際法の常識に反する徴用工判決が出た背景には、こうした報道の影響もあるはずだ。

※週刊ポスト2018年11月30日号

関連記事

トピックス

WSで遠征観戦を“解禁”した真美子さん
《真美子さんが“遠出解禁”で大ブーイングのトロントへ》大谷翔平が球場で大切にする「リラックスできるルーティン」…アウェーでも愛娘を託せる“絶対的味方”の存在
NEWSポストセブン
ベラルーシ出身で20代のフリーモデル 、ベラ・クラフツォワさんが詐欺グループに拉致され殺害される事件が起きた(Instagramより)
「モデル契約と騙され、臓器を切り取られ…」「遺体に巨額の身代金を要求」タイ渡航のベラルーシ20代女性殺害、偽オファーで巨大詐欺グループの“奴隷”に
NEWSポストセブン
高校時代には映画誌のを毎月愛読していたという菊川怜
【15年ぶりに映画主演の菊川怜】三児の子育てと芸能活動の両立に「大人になると弱音を吐く場所がないですよね」と心境吐露 菊川流「自分を励ます方法」明かす
週刊ポスト
ツキノワグマは「人間を恐がる」と言われてきたが……(写真提供/イメージマート)
《全国で被害多発》”臆病だった”ツキノワグマが変わった 出没する地域の住民「こっちを食いたそうにみてたな、獲物って目で見んだ」
NEWSポストセブン
2020年に引退した元プロレスラーの中西学さん
《病気とかじゃないですよ》現役当時から体重45キロ減、中西学さんが明かした激ヤセの理由「今も痺れるときはあります」頚椎損傷の大ケガから14年の後悔
NEWSポストセブン
政界の”オシャレ番長”・麻生太郎氏(時事通信フォト)
「曲がった口角に合わせてネクタイもずらす」政界のおしゃれ番長・麻生太郎のファッションに隠された“知られざる工夫” 《米紙では“ギャングスタイル”とも》
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《ビザ取り消し騒動も》イギリス出身の金髪美女インフルエンサー(26)が次に狙うオーストラリアでの“最もクレイジーな乱倫パーティー”
NEWSポストセブン
東京都慰霊堂を初めて訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年10月23日、撮影/JMPA)
《母娘の追悼ファッション》皇后雅子さまは“縦ライン”を意識したコーデ、愛子さまは丸みのあるアイテムでフェミニンに
NEWSポストセブン
将棋界で「中年の星」と呼ばれた棋士・青野照市九段
「その日一日負けが込んでも、最後の一局は必ず勝て」将棋の世界で50年生きた“中年の星”青野照市九段が語る「負け続けない人の思考法」
NEWSポストセブン
2023年に結婚を発表したきゃりーぱみゅぱみゅと葉山奨之
「傍聴席にピンク髪に“だる着”姿で現れて…」きゃりーぱみゅぱみゅ(32)が法廷で見せていた“ファッションモンスター”としての気遣い
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
松田聖子のモノマネ第一人者・Seiko
《ステージ4の大腸がんで余命3か月宣告》松田聖子のものまねタレント・Seikoが明かした“がん治療の苦しみ”と“生きる希望” 感激した本家からの「言葉」
NEWSポストセブン