国内

特殊詐欺の成否を握る「名簿」はどこで生成されているのか

「名簿」によってそのビジネスの成否が変わる

 個人情報保護法が成立し施行された現在も、限られた利用目的の範囲で、適正な方法で入手されるなど法律で定められた条件をクリアした名簿は販売されている。オレオレ詐欺に代表される特殊詐欺グループも名簿を利用していることで知られているが、彼らが利用しているのは、合法違法とりまぜた独特の名簿だ。ライターの森鷹久氏が、名簿をとりまく業界の建前と本音についてレポートする。

 * * *
 ゴルフ会員権に、高級自動車購入者、アダルト動画サイト加入者、果ては「特殊詐欺被害者」リストまで──。

 今回、筆者の取材に応じてくれたのは、都内のダイレクトメール発送代行業者に勤めるX氏。職業柄、個人情報が悪用される様々なケースに精通している氏が、個人情報保護がこれほど声高に叫ばれる中で、なぜ未だに個人情報が流通し、悪用され、詐欺被害者が相次ぐのか、詳細を語った。

「きっかけは、2003年に個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)ができたことです。実はあまり知られていませんが、かつては“住民基本台帳”を名簿業者が役所などで簡単に閲覧することができ、そこで得られた情報がデータ化され、販売されていました。名前と生年月日、家族構成などの情報も“無料”だったわけですから、百人二百人くらいのデータには何の価値もなくて、千人とか一万人のデータでも数千円で取引されていました」(X氏)

 それまで台帳閲覧についての制限が定められた法律はなかったが、個人情報保護法が成立し2005年に施行されたことで、2006年に住民基本台帳法も改正された。その結果、公益性のある統計調査など以外では台帳の閲覧ができなくなったため、情報の価値はぐっと高まった。

 需要がある場所には、ニーズに応えたよりよい商品が整えられる。名簿の世界も同じで、情報の価値が高まったのにあわせて、より使いやすい名簿が出現した。過去に入手していた住民基本台帳の情報に、他の業者から仕入れた顧客データ、会員データなどを付け加え、付加価値を持った「データ」を販売する業者が出始めたのである。

「個人情報がカネになるようになったのは、皮肉にも個人情報保護法のおかげなんですよ。私の会社では、合法的に集められた個人情報をまとめて、通販業者から委託されたハガキ広告をターゲットごとにお送りしています。例えばランドセルの広告は、来年小学校に上がるお子さんをお持ちの家庭以外に送っても意味がないでしょう? 誰に何を伝えたいかによって、個人情報のまとめ方も変わるのです。この情報を悪用したのが、特殊詐欺に関わる連中です。誰から何を盗りたいか、という目論見に、この情報が活用されることになったのです」

関連キーワード

関連記事

トピックス

男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”の女子プロゴルフ・川崎春花、阿部未悠、小林夢果を襲う「決勝ラウンド3人同組で修羅場中継」の可能性
週刊ポスト
都内の高級住宅街に大きなあ戸建を建設中の浅野温子
浅野温子、都内高級住宅街に二世帯住宅を建設中 資産価値は推定5億円、NHK元アナウンサーの息子一家との同居で始まる“孫育て”の日々
女性セブン
再婚妻との子どもが生まれた東出昌大。杏はイラストで子どもとの日常を投稿
《東出昌大と新妻による出産報告も突然のYouTube休止》3児の母・杏がSNSに投稿していた「家族イラスト」の意味深な背景
NEWSポストセブン
女優の吉岡里帆(右)と蓮佛美沙子がタッグを組む
【吉岡里帆×蓮佛美沙子】能登復興祈念公演ふたり芝居『まつとおね』で共演 吉岡「蓮ちゃんは、まさに頼りになる『あねさま』」、蓮佛「見ているとハグしたくなるんです」
週刊ポスト
父親で精神科医の田村修容疑者(SNSより)
「供述に信用できない部分も…」ススキノ事件・田村修被告に執行猶予判決、求刑懲役10年を大幅に下回ったワケ
NEWSポストセブン
3つの出版社から計4冊の書籍が発売された佳子さま(時事通信フォト)
「眞子さんにメッセージを送られているのでは」佳子さま(30)のワイン系ツイードジャケットに込められた“特別な想い”《お二人の思い出の場でお召しに》
週刊ポスト
自殺教唆の疑いで逮捕された濱田淑恵容疑者(62)
【独占入手】女占い師の自殺教唆事件で亡くなった男性の長男が手記「200万円の預金通帳を取り上げられ…」「学費と生活費をストップ」、さらに「突然、親子の縁を切る」 警察に真相解明も求める
NEWSポストセブン
2023年12月に亡くなった八代亜紀さん
《前代未聞のトラブル》八代亜紀さん、発売予定の追悼アルバムの特典に“若い頃に撮影した私的な写真”が封入 重大なプライバシー侵害の可能性
女性セブン
旭琉會二代目会長の襲名盃に独占潜入した。参加者はすべて総長クラス以上の幹部たちだ(撮影/鈴木智彦。以下同)
《親子盃を交わして…》沖縄の指定暴力団・旭琉會「襲名式」に潜入 古い慣習を守る儀式の一部始終、警察キャリアも激高した沖縄ヤクザの暴力性とは
NEWSポストセブン
キルト展で三浦百恵さんの作品を見入ったことがある紀子さま(写真左/JMPA)
紀子さま、子育てが落ち着いてご自身の時間の使い方も変化 以前よりも増す“手芸熱”キルト展で三浦百恵さんの作品をじっくりと見入ったことも
女性セブン
被害者の「最上あい」こと佐藤愛里さん(左)と、高野健一容疑者の中学時代の卒業アルバム写真
〈リアルな“貢ぎ履歴”と“経済的困窮”〉「8万円弱の給与を即日引き落とし。口座残高が442円に」女性ライバー“最上あい”を刺殺した高野健一容疑者(42)の通帳記録…動機と関連か【高田馬場・刺殺】
NEWSポストセブン
緑の芝生に映えるチームカラーの青を基調としたユニフォーム
《横須賀から全国へ》16年ぶりの名門復活へ歩み始めた日産野球部、伊藤新監督が明かした意気込みとチーム作り「技術の日産ふさわしいチームに」
NEWSポストセブン