中川:テレビはタダで見られるのが当たり前と思っている浅いファンが多い、という点とも共通してますね。有益な情報だろうと、情報にお金を払う価値があるとは考えない。
橘:中川さんが本でも書かれていたように、結局テレビもネットニュースも芸能人の噂話と正義の話ばかりですよね。脳の快楽中枢を刺激する話題というのは、ある程度生得的に決まっているんじゃないかと思います。
中川:そうですね。多くの視聴者やPVを集めるコンテンツは間違いなくそのあたりです。だからテレビでもネットでも、マスを相手にせざるを得ないメディアは、そういうところに行き着いていく。
橘:そう考えると、日大アメフト部の悪質タックル問題にメディアが殺到したのもよくわかります。自分は安全なところにいて、いくらでも好きに叩けますから。民放テレビの女性局員が財務省の事務次官を「接待」していた、という話とはぜんぜんちがいますよね。
中川:テレビ局からしても、事務所からのクレームとか気にしなくていいテーマだったから、やりたい放題でしたね。
橘:ハッシュタグをつけて、番組オンエア中にツイートするのがすごく流行っていますよね。みんなが見ているものをツイートした方が面白いし反響が大きいわけだから、視聴率が高い番組に殺到する。「Winner-Take-All」理論で、視聴率を取るためになりふり構わずになるのも、必然かなと。
中川:企業とか番組にしても、ハッシュタグを使ってツイートすると何かをプレゼントする、とまで言っちゃってますからね。番組の作り手と話をしていたら、その番組名がハッシュタグでツイートされまくり、ツイッターの世界トレンドに入ることを目指しているそうです。
橘:私の場合は、自分にはたいした能力はないというのが前提なので、マス戦略は最初からあきらめて、ニッチ戦略を徹底するようにしています。みんなと同じことをやっていたら、それだけ強力なライバルがたくさんいるわけですから。大スターになって世界じゅうから注目されたいとかじゃなかったら、マスマーケットでWinner-Take-Allを目指すより、ニッチマーケットで人とちがうことをやってそこそこ目立ったほうが明らかに費用対効果が高い。だから、マスで勝負するしかない人たちは大変だなと思います。