芸能

映画『ボヘミアン・ラプソディ』はクイーンの最新作なのか?

フレディ・マーキュリーは死の前日にHIVを告白(初来日時のクイーン Ph:Getty Images)

 イギリスの伝説的ロックバンド・クイーンのボーカリストであるフレディ・マーキュリーの生き様を描いた映画『ボヘミアン・ラプソディ』が大ヒット中だ。観客動員数180万人を記録し(12月10日現在)、『シン・ゴジラ』(2016年)に匹敵する人気となっている。

 クイーンはメインボーカルのフレディとギタリストのブライアン・メイ、ドラマーのロジャー・テイラー、そしてベーシストのジョン・ディーコンによって、1971年に結成。デビュー当時は独創的な音楽性が賛否両論を呼び、すぐに大成功となったわけではなかった。そんななか、日本で先に火がつく形で、クイーンの人気は拡大。そして、1975年11月に発売された4枚目のアルバム『オペラ座の夜』からシングルカットされた『ボヘミアン・ラプソディ』が全英1位、全米4位とヒットを記録し、クイーンの人気は不動のものとなった。

 フレディはゲイであることをカミングアウトはしていないが、独特の短髪や革の服など、ゲイファッションとされるものの一種を好んでいたこともあり、それは周知の事実だった。映画・音楽ジャーナリストの宇野維正さんはこう話す。

「フレディはHIV感染が原因で亡くなりますが、感染をメンバーに告白する時期は、映画と異なります。そもそも『ライヴ・エイド』の頃はまだ、フレディ自身が感染を認識していなかったのです」

 1985年には6度目の来日公演で成功をおさめ、その後、7月には20世紀最大のチャリティ音楽イベントである「ライヴ・エイド」に出演。同ライヴにはデヴィッド・ボウイやエルトン・ジョン、ポール・マッカートニーら、錚々たるアーティストが出演していた。クイーンを何度も取材してきた音楽評論家の東郷かおる子さんが語る。

「私も『ライヴ・エイド』の会場にいましたが、全出演者の中で、そのカリスマ性と人を惹きつける力は、クイーンがいちばんでした」

 その後も彼らはヒット曲を世に送り出したが、フレディの体調悪化は深刻になっていた。

「当時のアルバムを聴くと、その歌詞や歌い方などから、彼の病が末期であることがよくわかります」(東郷さん)

 そして1991年11月23日、フレディはHIVに感染していることをファンに告白。衝撃的な発表に騒然とする中、翌日、HIVから併発した肺炎により非業の最期を遂げる。45才の若さだった。

 残されたメンバーのブライアン・メイとロジャー・テイラーは今もフレディの遺志を引き継ぎ音楽活動を続け、この映画の製作にも名を連ねている。ジョン・ディーコンは活動を休止し、表舞台から姿を消している。

「この映画には紆余曲折があり、10年の歳月を費やしてクランクアップされています。史実と異なるところも若干ありますが、ブライアンとロジャーが作品の方向性を決めている。だから、ある意味ではクイーンの最新作といえるかもしれません」(宇野さん)

 1991年のフレディ・マーキュリーの死から27年。世界を熱狂させたスターが再び評価され、再びブームが沸き起こっている。

※女性セブン2019年1月1日号

関連記事

トピックス

奥田瑛二
映画『かくしごと』で認知症の老人を演じた奥田瑛二、俳優としての覚悟を語る「羞恥心、プライドはゼロ。ただ自尊心だけは持っている」
女性セブン
『EXPO 2025 大阪・関西万博』のプロデューサーも務める小橋賢児さん
《人気絶頂で姿を消した俳優・小橋賢児の現在》「すべてが嘘のように感じて」“新聞配達”“彼女からの三行半”引きこもり生活でわかったこと
NEWSポストセブン
NEWS7から姿を消した川崎アナ
《局内結婚報道も》NHK“エース候補”女子アナが「ニュース7」から姿を消した真相「社内トラブルで心が折れた」夫婦揃って“番組降板”の理由
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【厳戒態勢】「組長がついた餅を我先に口に」「樽酒は愛知の有名蔵元」六代目山口組機関紙でわかった「ハイブランド餅つき」の全容
NEWSポストセブン
真美子夫人とデコピンが観戦するためか
大谷翔平、巨額契約に盛り込まれた「ドジャースタジアムのスイートルーム1室確保」の条件、真美子夫人とデコピンが観戦するためか
女性セブン
日本テレビ(時事通信フォト)
TBS=グルメ フジ=笑い テレ朝=知的…土日戦略で王者・日テレは何を選んだのか
NEWSポストセブン
今シーズンから4人体制に
《ロコ・ソラーレの功労者メンバーが電撃脱退》五輪メダル獲得に貢献のカーリング娘がチームを去った背景
NEWSポストセブン
「滝沢歌舞伎」でも9人での海外公演は叶わなかった
Snow Man、弾丸日程で“バルセロナ極秘集結”舞台裏 9人の強い直談判に応えてスケジュール調整、「新しい自分たちを見せたい」という決意
女性セブン
亡くなったシャニさん(本人のSNSより)
《黒ずんだネックレスが…》ハマスに連れ去られた22歳女性、両親のもとに戻ってきた「遺品」が発する“無言のメッセージ”
NEWSポストセブン
主犯の十枝内容疑者(左)共犯の市ノ渡容疑者(SNSより)
【青森密閉殺人】「いつも泣いている」被害者呼び出し役の女性共犯者は昼夜問わず子供4人のために働くシングルマザー「主犯と愛人関係ではありません」友人が明かす涙と後悔の日々
NEWSポストセブン
不倫疑惑に巻き込まれた星野源(『GQ』HPより)とNHK林田アナ
《星野源と新垣結衣が生声否定》「ネカフェ生活」林田理沙アナが巻き込まれた“不倫疑惑”にNHKが沈黙を続ける理由 炎上翌日に行われた“聞き取り調査”
NEWSポストセブン
ハワイの別荘と合わせて、真美子夫人との愛の巣には約40億円を投資
【12億円新居購入】大谷翔平、“水原一平騒動”で予想外の引っ越し 日系コミュニティーと距離を置き“利便性より静けさ”を重視か
女性セブン