スポーツ

浦和レッズ監督が「オズの魔法使い」と崇められる理由

天皇杯決勝、指示を出す浦和のオズワルド・オリヴェイラ監督(時事通信フォト)

 W杯ベスト16で盛り上がった2018年の日本サッカー。直前の監督交代で囁かれた不安を文字通り一蹴した西野朗監督の手腕を日本中が称賛した。一方、日夜サッカー漬けの毎日を送るJリーグの熱烈サポーターの間でもっとも印象的だった指揮官として名前が挙がるのが、浦和レッズを率いて天皇杯優勝を成し遂げたオズワルド・オリヴェイラ監督である。Jリーグ発足時からレッズをウォッチするライターの麻野篤氏が指摘する。

 * * *
 昨シーズンはACLチャンピオンとなり、アジアナンバーワンのクラブに返り咲いた浦和レッズ。しかし、今期は序盤から不調が続き、シーズン中に2度も監督が交代するなど安定感を欠いた戦いぶりだった。結局リーグ戦は5位となって、来期のACL出場圏内からも脱落してしまった。

 ところが、そんな下降気味のチーム状況で迎えたシーズン終盤の天皇杯では、しぶとい勝負強さを発揮して優勝。ぎりぎりの瀬戸際で、見事にACL行き最後の切符をたぐり寄せた。

 立役者となったのはブラジル人指揮官のオズワルド・オリヴェイラ監督。2007年に鹿島アントラーズの監督として日本の地を踏むと、チームに前人未踏のJリーグ三連覇を含む数々のタイトルをもたらした。大胆な選手起用やチーム全体を見渡すマネージメント力にたけ、その人心掌握術は「オズの魔法使い」とも呼ばれる。

 7年ぶりのJリーグ監督となった今季も、その魔法はいかんなく発揮された。

 サッカー選手の経験がないというオリヴェイラは、大学院まで運動科学や生理学を学び、フィジカルコーチとしてサッカー界に入ったという異色の経歴だ。自らの著書では、「私は哲学を持たない。持った瞬間にその哲学に縛られてしまうから」と、指導者としての臨機応変な対応力の重要性を説いている。

 国内随一のサポーターを抱えるといわれる浦和では、サポーター内にも様々な意見が存在する。それゆえ、チームの成績が上がらなければ、サポーターの声が不況和音となって響き出し、クラブが厳しい状況に追い込まれていくという歴史を繰り返してきた。サポーターが試合後のスタジアムに居座ったり、選手の乗ったチームバスを囲むなどの抗議行動がマスコミを賑わすことも珍しくない。

 熱狂的ともいえるサポーターのチーム愛の強さが、時として諸刃の剣となる可能性もはらんでいるのだ。

 ライバルチームである鹿島で5年間監督をしていたオリヴェイラも、もちろんそれを把握していた。今年の就任会見(4月22日)ではこう語っている。

「浦和は、サッカーが呼吸する街だと思っています。100年以上のサッカーの歴史がここにはあります。ですので、浦和でいつか仕事をしたいという気持ちがありました。浦和のサポーターの応援の仕方は、他のチームとまた違ったものがあります。そして、そういったチームの監督になりましたけれど、ピッチ上での選手のがんばりとサポーターの応援が一体となれば必ず成功につながると思います」

 このようにサポーターへの関心を表したオリヴェイラだが、実はシーズンを通しては頻繁にサポーターへメッセージを送ったりはしていない。試合後の会見を見ても、「ファン・サポーターの存在が、我々にとってのアドバンテージでした」(19節・川崎戦)とか「(私の)サポーターに対する情熱は非常に高いものです」(30節・鹿島戦)といった、どちらかといえば間接的な表現が多かった。

 そんなオリヴェイラが、シーズン最終盤になって突如動いた。

関連記事

トピックス

”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン
左から広陵高校の34歳新監督・松本氏と新部長・瀧口氏
《広陵高校・暴力問題》謹慎処分のコーチに加え「残りのコーチ2人も退任」していた 中井監督、部長も退任で野球経験のある指導者は「34歳新監督のみ」 160人の部員を指導できるのか
NEWSポストセブン
二刀流復帰は家族のサポートなしにはあり得なかった(getty image/共同通信)
《プールサイドで日向ぼっこ…真美子さんとの幸せ時間》大谷翔平を支える“お店クオリティの料理” 二刀流復帰後に変化した家事の比重…屋外テラスで過ごすLAの夏
NEWSポストセブン
松本智津夫・元死刑囚(時事通信フォト)
【オウム後継「アレフ」全国に30の拠点が…】松本智津夫・元死刑囚「二男音声」で話題 公安が警戒する「オウム真理教の施設」 関東だけで10以上が存在
NEWSポストセブン
9月1日、定例議会で不信任案が議決された(共同通信)
「まあね、ソーラーだけじゃなく色々あるんですよ…」敵だらけの田久保・伊東市長の支援者らが匂わせる“反撃の一手”《”10年恋人“が意味深発言》
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《デートではお揃い服》お泊まり報道の永瀬廉と浜辺美波、「24時間テレビ」放送中に配慮が見られた“チャリT”のカラー問題
NEWSポストセブン
8月に離婚を発表した加藤ローサとサッカー元日本代表の松井大輔さん
《“夫がアスリート”夫婦の明暗》日に日に高まる離婚発表・加藤ローサへの支持 “田中将大&里田まい”“長友佑都&平愛梨”など安泰組の秘訣は「妻の明るさ」 
女性セブン
経済同友会の定例会見でサプリ購入を巡り警察の捜査を受けたことに関し、頭を下げる同会の新浪剛史代表幹事。9月3日(時事通信フォト)
《苦しい弁明》“違法薬物疑惑”のサントリー元会長・新浪剛史氏 臨床心理士が注目した会見での表情と“権威バイアス”
NEWSポストセブン
海外のアダルトサイトを通じてわいせつな行為をしているところを生配信したとして男女4人が逮捕された(海外サイトの公式サイトより)
《公然わいせつ容疑で男女4人逮捕》100人超える女性が在籍、“丸出し”配信を「黙認」した社長は高級マンションに会社登記を移して
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
当時の水原とのスタバでの交流について語ったボウヤー
「大谷翔平の名前で日本酒を売りたいんだ、どうかな」26億円を詐取した違法胴元・ボウヤーが明かす、当時の水原一平に迫っていた“大谷マネーへの触手”
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン