実際、いつから前日練習を公開することを考えたのか?というメディアからの問いかけに、オズは、
「レッズのように、たくさんのファン・サポーターがいるクラブに所属していたときは、このようにしてきました。ですので、初めてではありません。選手たちに刺激を与えることも必要と思える状況でしたし、サポーターほど選手たちに情熱を伝えられる存在はいないと思います」
と、自らの経験に裏打ちされた魔法の手腕の一端であることを明かしたのだった。
決勝前日。土曜日ということも相まって、練習場に集まったサポータは約800人。横断幕は110枚にもおよんだ。
練習終わりには、サポーターの前にオズ自身が歩み寄って挨拶。盛大なコ-ルを受け練習を締めくくった。
多くのサポーターが「今回は負ける気がしなかった」と言う雰囲気を作り出して決勝戦に臨めた時点で、チームはすでに頂点に近づいていたのかもしれない。しかも、チームスタッフが懸念していた前日練習におけるセットプレーなど戦術的部分の情報漏れもまったくなかった。浦和サポーターのSNSからは、ポジティブな情報だけが発信され続けた。オズ政権下では、クラブとサポーターとの信頼関係も確実に構築されてきている。
1-0の勝利で天皇杯とACL切符を手中に入れたチームには、大一番でことごとく涙を飲んできた近年のレッズのイメージは、もはや感じられなかった。
オズの魔法はとどまることを知らない。すでに、「可能であれば前日練習をスタジアムでやりたい」「そうすれば2万人のサポーターからパワーをもらえるかもしれない」と壮大な構想を語っているという。
スタジアムの使用許可などクリアすべき問題は多いが、オズなら実現してくれる、という想いを抱かせるだけの存在感が、この魔法使いにはあるのだ。
世界25のチームを渡り歩き、ブラジルだけでも14チームを指揮してきたというオズ。培われたマネージメント力は、実戦に裏打ちされた組織論として、ビジネスマンにとっても応用できるヒントが多く隠されているのではないだろうか。
「魔法」の一言で片づけるのはもったいない。